オイハギカモメ
学名:ファルコラルス・アヴィラニウス

Thiefgull(Falcolarus avilanius)
分類*鳥綱 鴫鴎目 カモメ科
棲息時代*近未来(400万年〜850万年後)
大きさ*全長50p(ハヤブサ大)
分布域*世界各地の様々な環境(進化の発端はヨーロッパ南部)

カモメの子孫。
みずかきが退化した脚と、鉤型に進化した嘴を持ち、
祖先のカモメと比較するとずっと捕食性が強い。
季節に拠って食べ物を、また狩りの方法を変えて生きる、
図抜けて適応能力の高い鳥。
ミギワヒロハシガモの繁殖期にはコロニーに飛来し、雛や卵を攫う。
ヒロハシガモの非繁殖期には、塩の平原に棲息する小動物を巧妙に狩り、
時折海に出ては、波間に浮かぶ小魚やイカを捕食する。
更に様々な動物の出産の現場に出現し、後産(胎盤や臍の緒)を平らげる。
死んだ動物にも群がり、カブトガラスと共に所謂「掃除屋」としての側面も持ち合わせる。
崖にコロニーを作り、一産3〜4個の卵を出産、雌雄共同で面倒を見る。
学名の意味は「鳥を引き裂くハヤブサのようなカモメ」である。
*新しい豊富な食資源を糧に繁栄する生き物が出現すれば、それを狙って新たな捕食者が進出するのも世の習いと言うものである。嘗て、濾過食性鳥類の先駆者であるプレスビオルニス類が塩水湖や干潟に溢れていた頃には、グンカンドリの遠い先祖であるリムノフリガ−タ(Limnofregata)と呼ばれる鳥類が彼等の主な捕食者として君臨していた。
そして今、ミギワヒロハシガモが繁栄する塩水湖の周辺には、オイハギカモメと呼ばれるカモメ類由来の捕食性鳥類が、隙あらば彼等の卵や雛を掻っ攫って餌食にしてやろうと空を旋回している。
彼等は先祖のカモメ類と同じく図抜けて適応能力が高く、食べられるものが存在する地域ならば何処にでも棲息する鳥である。その嘴は鉤型に変化し、泳ぐ事を忘れた脚はみずかきが退化して鉤爪を持つに至った…この嘴と鉤爪で獲物を屠る様は、まさに小型の猛禽類と言った趣である。
オイハギカモメのある個体群は、ミギワヒロハシガモが出現してからと言うもの、この生き物を積極的に獲物として狙うようになった。主な獲物は産み落とされたばかりの卵や孵化したばかりの雛であるが、時には病気や老衰で弱ったヒロハシガモの成鳥を襲う事も有る。一方、食べられる側のヒロハシガモも、数万羽にも及ぶコロニーを形成する事でこの新たな捕食者の猛攻を最小限に食い留めている。

*人類時代、その繁殖力の高さと何でも食べる貪欲な食性を武器に、世界のあちこちで繁栄していた鳥が2系統存在する。ひとつはカラスの仲間で、彼等は人間が出す生ゴミを糧に比較的人間に近い場所で生きていた。もうひとつはカモメ類である。彼等はカラスほど人間に依存した暮らしを送っていた訳ではなかったが、矢張り生存の為に人間の生産活動を利用する事があった。こうした鳥は人間の立場からは「害鳥」と忌み嫌われ、しばしば個体群の規模を縮小する為に理不尽なまでの駆除活動に晒され続けたが、旺盛な繁殖力はそれに充分過ぎるほどの抵抗を示して見せた。そして人類時代が終わりを告げた後も、彼等は変わらない繁栄を続け、変わり行く世界で様々な新しい動物を生み出していったのだった。
オイハギカモメはそうしたカモメ類の子孫の一つである。カモメ類はその多くが、先祖のそれよりも強い捕食性を示す方向へと進化し、各地で絶滅した猛禽類の生態的地位を確保している。近縁種の中には、もっと猛禽類然とした強力な鳥類に進化したものもあるが、オイハギカモメはそうした近縁種に比べると、まだ嘗てのカモメ類の面影を残した姿をしている。この事から、恐らくオイハギカモメはカモメ類が新たな動物へと進化する過程に置いて、過渡期とも言える位置に存在するものと思われる。こうした、先祖の面影を強く残す動物を「遺存種」(レリック)と呼ぶ。
***この動物をより知る為のキーワード***
遺存種(いぞんしゅ)

「レリック」とも呼ぶ。進化の過程で先祖が保持する原始的形質を色濃くその身体に留めている、最も新しい種と比較した場合に非常に原始的な動物の事。代表的な遺存種を下記に記す。(左が遺存種、右がその系統の最も新しい種)

コビトカバ→カバ
オカピ→キリン
キツネザル→真猿類