クビワオオコウモリ
Borodino Fruit Bat (Pteropus dasymallus)
沖縄県に伝わる昔話。
昔、スズメとコウモリは兄弟だった。
ある時、スズメとコウモリはさる分限者に招かれ、
宴席で踊りを披露する事になった。
準備が整い、さて踊りを披露…と言うまさにその間際、
二人の親が危篤に陥っていると言う報せが届いた。
スズメはそれを聞くと、取るものも取りあえず、大急ぎで親元へ向かったが、コウモリは
「大掛かりに支度をして、踊りを見る人が大勢待っているのに今更席を空ける訳には行かぬ」と、
親元には向かわず宴席に留まり続けた。
だからスズメは親の死に目に会えたけれど、コウモリは随分遅れて親元に到着する次第となった。
造化の神はこの事を聞いて豪く立腹なされた。
早速スズメとコウモリを呼びつけてこう宣言した。
「スズメは大変親孝行で感心なので、
これからはヒトの住まう家の軒下に住処を構え、
ヒトが育てる五穀を好きなだけ食べても良い。
コウモリよ、お前は大変親不孝で不届きな者であるから、
これからは枝に正常に留まる事もならず、雨に晒され風に吹かれ、
闇夜にこそこそと飛び回り、まずい物しか食べられない
惨めな暮らしをする事になろう」と。
スズメとコウモリが今のような暮らしをしているのは、
その時の神の言いつけに拠る物だ、と言う話である。
<データ>
*分類*
哺乳綱 翼手目 オオコウモリ科
*分布*
台湾から日本の南西諸島(沖縄、鹿児島県南端の離島など各地)の森林地帯
*大きさ*
頭胴長19〜23cm、翼開長80〜90cm、体重500〜700g
*食性*
植物食(果汁食)。クワ、パパイヤ、パイナップル等の果実を好む。
歯が原始的で咀嚼出来ない為、、果実は齧りとって果汁を絞って啜り摂り、カスはまとめて吐き捨てる。
*備考*
植物質のみを食べる、所謂「フルーツバット」(果実食コウモリ)の一種。カラスほどの大きさになる。
キツネに似たとがった吻部と、首輪のように色分けされた胸部の長毛が特徴的。
昼間は森林の内部で数百頭単位の大群で休息し、夕方になると
ねぐらを出て餌を探しに方々へ飛び回る。
採食事も大群で行動する為、時に果樹園などが大被害を蒙る事もある。
棲息地域によって5つの亜種に細分され、幾つかの亜種は天然記念物に指定されている。
環境破壊が原因で個体数が減少している一方で、
果樹農業などに被害を齎すので害獣扱いされ、保護の方法が議論されている。