オオアタマガメ
Big-headed Turtle (Platyternon megacephalim)

中国の伝説には実に様々な空想上の動物が登場するが、
その中に「吉弔」(きっちょう)と言うモノがある。
中国の霊獣の頂点に立つ存在・龍(りゅう)の一種と言われている。

見かけはカメに似ていなくも無い。
然し、その頭は大きく尾は長く、恰もヘビのそれに似ている。
甲羅はカメのそれでは無く、瓦のような鱗が幾重にも重なって出来たモノだ。
肉は柔らかすぎて食用にならないが、
練り物にすると傷や腫れ物に効く軟膏になると言われ、
人々は挙ってこの幻の獣を捜し求めたと言われる。

一部研究家に寄ると、
中国の奥地に棲む珍しいカメ・オオアタマガメこそ
この「吉弔」のモデルである可能性があると言う。
確かにオオアタマガメは幻獣のモデルにされるに値する珍奇なカメである。
甲羅に収まらない大きな頭、モノに巻きつく長い尾、扁平な体…
だが、オオアタマガメが珍しいのは見かけだけではない。

彼等は山間部の渓流に棲む。
時には大きな巌や流木を乗り越えて移動しなければならない。
このオオアタマガメは、そうした環境に適応し、立体運動能力が極めて高いのである。
通常のカメなら諦めざるを得ないような巌や流木でも、
長いツメをザイルのように用いてしっかりとよじ登るし、
長い尾を突出物に巻きつけて体を支える事も出来る。

厳しい環境の賜物とは言え、只者では無いカメである。
<データ>

*分類*
爬虫綱 カメ目 オオアタマガメ科
*分布*
南アジア(中国から東南アジアにかけて)の山岳地帯
*大きさ*
甲長18〜20cm程度
*食性*
肉食。
*備考*
山岳地帯の渓流を好んで住処とする珍しいカメ。
分布域はかけ離れているものの、アメリカ大陸に特産するカミツキガメ類に近縁と言われている。
噛む為の筋肉を支える大きな頭、纏じょう性を保持する長く力強い尾、
扁平な体つき、強力な四肢が特徴的。
カメとしては高い立体運動能力を持ち、切り立った大岩をツメと脚の力を頼みによじ登ったり、
長い尾を突出物に巻きつけて体を固定したり、軽業師のような行動を示す。
棲息地が僻地な為、野生での行動には不明な点が多いが、
6〜9月頃が繁殖期で、ひと腹で2個前後の産卵が見られる事は判明している。
珍奇な姿から嘗てペットとしての流通が盛んだったが、
最近では乱獲が祟ったのか、嘗て程の流通は無くなっている様である。