ササゴイ
Green Heron (Butorides striatus)

ヒトと隣り合って生きていく暮らしが続くと、
動物や鳥は思いのほか「したたか」になる。
カモ類がわざと人間の居住区の中に営巣し子育てして、
見物の人間達を天敵に対する「ボディガード」に利用したり、
下水道などを住処に、生ゴミを餌に、タヌキやイタチが街中で細々と生きている、
などと言う話を、最近耳にする事が多くなった。

此処に紹介するササゴイの話も、
ヒトと隣り合った暮らしが生み出したエピソードでは無いかと思う。

熊本県の水前寺公園に住むササゴイは、
餌の小魚を得る為に「疑似餌」を使う事を覚えた。
魚影の濃い場所で、昆虫、木の枝葉、羽毛、キノコ、
果ては観光客が捨てたポップコーン等を探し出し、
水面下の魚の様子を確かめて、おもむろにそれを水面に投げ飛ばす。
それもただ投げるのではなく、魚の進行方向に向け正確に投げると言う。
そして、疑似餌に誘き寄せられた魚が射程範囲内に泳ぎ寄るのを見計らって、
一瞬の早業で魚を嘴で捕らえるのである。

この行動の起源には不明な点が多く、今も綿密な調査が行われているが、
恐らく、池のコイにポップコーン等を与えている人間の姿を見て、
ただ闇雲に視覚のみで魚を追い求めるよりは…とササゴイ達は思ったのかも知れない。
少なくとも、それを本能的に感知するだけの知能を
彼等が持つ事には相違無いと思われるのである。
<データ>

*分類*
鳥綱 鸛鷺目 サギ科
*分布*
アジア東部、オセアニア、アフリカ、中米、南米の湖沼地帯
*大きさ*
全長40〜52cm、翼開長52〜78cm、体重135〜500g
*食性*
魚食性。小魚の他、ザリガニなどの甲殻類も好物。
*備考*
ずんぐりした外見が特徴的な小型のサギ。緑がかった青灰色の体色が英名の由来。
日本では主に夏に飛来する渡り鳥で、主に西日本で見られる。
性質は用心深く、普段はヨシやガマの密集した茂みに隠れるように暮らしている為、
なかなかその姿を目にするのは困難。但し公園など、ヒトの出入りが多い地域ではその限りでは無い。
基本的に昼行性だが、時に夜間活動する事もある。つがいで行動し、大きな群れは作らない。
餌を得られさえすれば海水域、淡水域、汽水域の如何を問わず出没する。
餌の小魚を誘き寄せる為、昆虫やパン屑、羽毛や木片などの
「疑似餌」を用いる行動がクローズアップされ、一時有名になった。
特に日本・熊本県の一部に棲むササゴイの「疑似餌行動」は他地域の個体群よりも巧妙な傾向がある事で知られる。