チータ
Cheetah (Acinonyx jubatus)

冒険家マルコ・ポーロは、嘗て大航海の末に立ち寄ったアジアで、
当時のモンゴル帝国の覇者チンギス・ハーンに謁見する機会を得た。

その時のマルコの記した記録は、当時の風俗を知る為のみならず、
人間と動物の関わりの歴史を知る上でも非常に貴重な資料である。

その記録の中に、チンギス・ハーンが娯楽の一環として、
「飼い馴らしたヒョウ」を数頭引き連れて狩りに出かける事があった、
と記されている。

この「ヒョウ」とは、実は地上最速の捕食動物・チータの事である。
チータは野生のネコ類には珍しく、成長した個体でも飼育するとよく馴れ、
さながら猟犬を使役するが如く狩りに用いる事が可能なのである。

インド、パキスタン、モンゴルなど、多くの国の王侯貴族達は、
この「レジャー」の為に多くのチータを捕獲した。
特に、伝説的なインドの為政者・アクバール大帝は、
在位中に1000頭ものチータを飼育していた事で知られている。

然し、この「レジャー」はチータにとっては有難くないモノだった。
この時の乱獲が原因で、チータは多くの地域で絶滅。
現在は限られた地域に細々と生き残るに過ぎない。

幸い、チータを使役する狩猟法は、現在では全く絶えた。
生き残ったチータ達がせめて安息に暮らせるよう、我々人間は努力を怠ってはならないと思う。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 ネコ科
*分布*
アフリカとアジア西部の草原地帯
*大きさ*
頭胴長110〜155cm、尾長60〜101p、体高1m前後、体重21〜72s
*食性*
肉食。主に小型の有蹄類やノウサギ等の小獣を捕らえる。
通常のネコ類と異なり、獲物は射程距離までの接近の後、自慢の脚力で追いかけて捕らえる。
*備考*
肉食動物としては最も足の速い動物。又の名を「狩猟豹」(シュリョウヒョウ)とも言う。
グレーハウンドを思わせるスマートな体型、長い尾、引っ込まない短い爪が特徴。
待ち伏せ型の狩猟行為を取るネコ類にあって、イヌ類のような追撃する狩りの技術を進歩させた珍しい捕食動物。
但し、長距離の疾走は苦手で、どちらかと言うと短距離ランナーとしての側面が強い。
ダッシュしてからスタミナが切れるまでの時間は凡そ10〜12秒と短く、そのスタミナ切れの前に獲物に留めを刺す。
単独から家族群までの多様な群れ形態で暮らし、概ね昼行性。
住環境の乱開発及び狩猟が原因で個体数が減っており、絶滅が懸念されている。
アフリカ南東部にいる個体群は駁文様が繋がって縞模様になるのが特色で、
特に「キングチータ」と呼称される事もある。