*草紙本が生んだ奇妙な童妖怪*
江戸時代も中頃になり、戦乱のない平和な世の中が訪れると、江戸や上方の都市を中心に様々な文化が発達し、人々の暮らしに浸透していった。そのひとつに「草紙本」がある。今で言うペーパーバックのようなモノかと思われる。
草紙本には様々なジャンルがあるが、中でも人気が高かったのは妖怪を扱ったものだった。
歌川国芳や十返舎一九などの草紙本作家の手により、それまで口碑のみの存在だった妖怪に姿が与えられたり、全く新しい妖怪が誕生したりした。
この「豆腐小僧」(とうふこぞう)も、そうした草紙本の流行が生み出した妖怪である。
見かけは10歳くらいの小僧で、深編み笠を被り墨染めの衣を着て、手にした盆には紅葉豆腐が乗せられている。
雨のしとしと降る晩等に一人歩きの人間の前に現れて、しきりに手にした豆腐を食べるよう薦める。しかし、賢明な人は其処で豆腐を食べてはいけない。何故ならば「豆腐小僧」の薦める豆腐を食べたものは、必ず全身をカビに侵されて長患いするからだと言う。
豆腐と妖怪の関係については不明な点が多いが、この妖怪は江戸時代の妖怪マニアの眼鏡に叶った存在らしく、しばしば草紙本に登場する。
※このイラストはmegさんのリクエストを受けて製作したものです