フタコブラクダ
Bactrian Camel (Camelus bactrianus)
日本に初めてやって来たラクダは、フタコブラクダだった。
初渡来の時に日本に残された記録が、それを物語っている。
昔の日本では、舶来モノの珍獣を見る事が
そのまま「厄払い」に繋がると信じられているきらいがあったから、
ラクダの見世物は大いに繁盛したと伝えられている。
今でも、フタコブラクダは動物園の人気者のひとつだ。
だが、そのフタコブラクダに
実は「家畜種」と「野生種」が存在する事はあまり知られていない。
察しがつく人もいるやも知れないが、
野生のフタコブラクダは、家畜のフタコブラクダの原種にあたる。
皮肉な事に、人間達の様々な生産活動が災いして、
野生のフタコブラクダは減少の一途を辿っている。
今や、純粋な野生のフタコブラクダはモンゴル・ゴビ砂漠の一部に
数百頭が残存しているに過ぎない。
原産地のモンゴルや近隣国の中国では、
彼等を第一等の希少動物として厳重に保護している。
保護が実り、彼等の命脈が保たれる事を強く願ってやまない。
<データ>
*分類*
哺乳綱 偶蹄目 ラクダ科
*分布*
モンゴル・ゴビの砂漠地帯(家畜種は世界各国に分布)
*大きさ*
頭胴長3〜3.3m、体高1.9〜2.3m、尾長50〜55p、体重450〜690s
*食性*
植物食。他の草食動物が見向きもしないような、砂漠に自生する潅木や各種草本を食べる。
*備考*
瘤を持ったラクダ2種の内のひとつ(もうひとつはヒトコブラクダ)。
旧世界のラクダ類では野生種が現存する唯一の種類で、ラクダの仲間では最大。
寒冷なゴビ砂漠の気候に適応した様々な特徴…
茶褐色の厚い毛皮、密生した睫毛、粗食に耐え一度に50リットルもの水を飲み込める胃袋、
砂嵐から鼻粘膜を守る為自在に開閉できる鼻孔等…を持つ。
また、歩く時に長い脚部がもつれないように、
同じ側の前脚と後脚を同時に前に出す「側対歩」と言う独特の歩き方をする。
背中の瘤は脊椎の棘突起を土台に硬い脂肪が密集したもので、不足時の栄養源である。
俗に言われているように瘤に水を蓄えると言う事はない。
家畜種は世界各国で見られるが、純粋な野生種は開発の余波で個体数が減少しており、
中国とモンゴルの厳重な保護を受けている。