イワウロコインコ
Rock Conure (Pyrrhura rupicola)

飼い鳥としての人気の条件と言ったら人はまず何を想像するだろうか。

姿が美しい事。
仕草が愛らしい事。
人に良く懐く事。
飼育管理が然程難しくない事…。

インコの類は、これらの条件をほぼ満たしている事から、
中世の頃から世界各地で飼育されてきた。
ヨーロッパでは、コロンブスやキャプテン・クックなどの冒険家が
南米の美しいインコ類をヨーロッパに齎したところ、
王侯貴族が狂喜乱舞した、とさえ言われている。

さて、此処に紹介する珍鳥・イワウロコインコ。
昨今、国内での飼育数が少しずつ増えている可憐なインコである。
活発でアグレッシヴな性質を持つ一方、「変わっているけど、可愛い」
と、愛好家の間で専らの評判である。

中でも興味を引く彼等の面白いエピソードに、
「転がる事」と「(人の服などに)潜り込む事」が挙げられる。
ケージの底をころころ転がったり、仰向けになったまま脚の手入れをしたり、
場所を選ばず仰向けになったまま、ぐっすりと寝てしまう個体が多いと聞く。
ある鳥飼育漫画には、飼ってきた早々、金網の底でひっくり返って寝ているイワウロコを見て、
「死んじゃった!」とひと騒動になった…と言うエピソードさえ残されているそうだ。

また、鳥用玩具や寝袋など、何かに寄りかかって休む事も好み、
寄りかかったまま直立や、どうかしたら後ろに反り気味の姿勢で、
ウトウトと白河夜船の状態になる個体も多いと言う。
更に、言葉を覚えた個体によっては(トーンの低い声で喋るそうである)、
夜中に“寝言”を呟く個体さえいるらしい。

その変わった仕草、無防備な姿を見るにつけ聞くにつけ、
「野生下では、この鳥は一体どんな暮らしを送っているのだろう…?」
と、深く興味が湧く所処である。
<データ>

*分類*
鳥綱 鸚鵡目 インコ科
*分布*
原産地は南アメリカ(アンデス山脈付近)の森林地帯
愛玩用として世界各地の個人愛好家を中心に少数が飼育されている。
*大きさ*
全長23〜25cm、体重64〜68g
*食性*
植物食。草本の種子や木の実を主食とする。
飼育下では薬用紅花、オートミール、ヒマワリの種等を与える事が多い。
*備考*
光沢のある緑色の羽毛と、翼の赤い縁取りが美しい小型のインコ。
頭頂部が黒っぽく、襟首に白い縁取りと暗褐色の斑紋が入った鱗状の飾り羽を持つのが名前の由来。
繁殖期(2〜3月あたり)には小集団で、それ以外の季節は30羽までの群れで暮らす。
樹幹部を生息環境として好み、樹高30m未満の区域には滅多に降りない。
小型ながら嘴の力が強く、その威力はプラスティック製の玩具を噛み砕いて破砕するほど。
また、樹上性故か後脚も非常に器用で、餌などを足の指で掴んで口に運んだり出来る。
活発なインコで、オカメインコやセキセイインコに比べるとやや飼育に技術を要するものの、
美しい姿と人懐っこい性質から昨今はペットとして一部愛好家の間で人気。

※このイラストは七川まおさんのリクエストを受けて製作したものです。
今回「百獣随想」収録にあたり、まおさんにはイワウロコインコの貴重なデータ提供に多大なるご協力を頂きました。
この場を借りて篤く御礼申し上げます。(中華的熊猫)