マンドリル
Mandrill (Mandrillus sphinx)
欠伸、と聞いて、皆様はどのようなイメージを持たれますか。
私が小学生の頃は、
欠伸と言うとあまり良いイメージは持たれていなかったような気がする。
欠伸をしたばっかりに教師にひっ叩かれた級友を何人も見かけたし、
「欠伸は飲み込め!」等と声高らかに明言する教師も結構多かった。
実際は脳に送り込まれる酸素が足りない事を示す、
一種のバロメータであるのだが。
さて、動物の世界ともなると、欠伸の役割も少々趣が異なる場合がある。
此処に示す珍猿・マンドリルは、
精神的に緊張したり、見かけない者が近付くと欠伸をする。
これは別に緊張のあまり脳の酸素が足りなくなったとか言う訳ではない。
彼等は非常に太く鋭い犬歯を持っており、
欠伸の際にはこれを殊更目立たせるように唇を捲り上げる。
即ち、恐るべき“武器”をちらつかせる事により、
「俺は強いんだぞ、余計な手出しは無用だぞ」と、
相手に視覚的なメッセージを与えているのである。
動物園でマンドリルが欠伸をして見せたらご用心。
貴方は彼に警戒されているのかも知れませんよ?
<データ>
*分類*
哺乳綱 霊長目 オナガザル科
*分布*
アフリカ西部の森林地帯
*大きさ*
頭胴長63〜81cm、尾長7〜9cm、体重50〜55kg
*食性*
雑食。果実や新芽、鳥の雛や卵、昆虫、時にはトカゲやネズミなどの小動物も捕食。
*備考*
類人猿(Ape)を除く、所謂有尾サル類(Monkey)では最も大きくなる種類。
最大の特徴は独特の隈取模様がある極彩色の顔と、霜降りになった褐色の被毛。
この色彩はオスの方が鮮やかで、メスでは色合いが薄く、また体格もメスよりオスの方が発達している。
1頭のオスに率いられた数頭のメスとその子供からなる小さな群れで暮らし、
時にはそうした群れが幾つもまとまって大きな群れになる事も有る。
森林の周囲にある岩がちな開けた土地で採食行動を取る。
成熟したオスは人間の小指ほども有る太く大きな犬歯を持ち、
ヒョウと対等に渡り合えるほどの高い戦闘能力を持つと考えられているが、
矢鱈に凶暴な訳ではなく、どちらかと言うと用心深くて大人しい性質。
肉を狙った密猟の影響で昨今個体数が激減している。