*積屍気より出ずる魔鳥*
仏教由来めいた名前を持つ妖怪「陰摩羅鬼(おんもらき)」は、元々は中国の妖怪である。
中国の古書に寄ると「陰摩羅鬼」は真新しい死人の体から立ち上る気が集まり、凝り固まって生まれる妖怪だと言われる。
その姿は鶴や鷺等の渉禽類に似て色は浅黒く、眼は灯火のように光り輝き、口から鬼火のようなものを吐く。翼を震わせて甲高い声で鳴く様は非常に不気味である。
仏事を怠る僧侶や、無断で寺社の中に立ち入る者があると姿を表し、咎め立てするように大きく叫び声を上げると言われる。
尚、似たような妖怪に「羅刹鳥(らせつちょう)」と言う物が在り、こちらは墓地に篭った陰気が集まって変化する鉤状の嘴を持った鶴に似た灰色の大きな鳥だと伝えられている。
「羅刹鳥」は「陰摩羅鬼」に比べると遥かに凶暴で、人間に化けて街や村に忍び込み、狙いをつけた人間を襲ってその目玉を抉り取ると言われる。但し、「羅刹鳥」が日本にやって来たと言う記録は今のところ発見されていない。