スマトラトラ
Sumatran Tiger (Panthera tigris sumatorae)
動物園では、時折動物の標本などを用いて、
その動物をより深く知ってもらう為の勉強会を主催している。
その日はトラの勉強会があった日だった。
トラの毛皮、頭骨、爪など、
様々な標本が並べられていた。
近づいて見てみると、やはりトラの毛皮と言うものは、
トラが生きている時にこそ美しいものだと思い知らされた。
切り取られたトラの毛皮は、あまりにもその美しさを損ないすぎる。
本来、トラの美麗な縞模様は、
敵の目を欺き、狩りの時に己の身を隠す為の物。
決して、人間の体を彩る為の物ではないのだ。
私は係員の人に言った。
「こんなに巧妙な隠れ身の術をトラは生まれながらに心得ているのに、
欲深な人間の目は欺く事が出来なかったんですね」
係員の人は
「巧い事いいますね」
と、苦笑した。
<データ>
*分類*
哺乳綱 食肉目 ネコ科
*分布*
スマトラ島の森林地帯
*大きさ*
頭胴長1.5〜1.8m、尾長70p前後、体重75〜150kg
*食性*
肉食。シカ、野生化したブタ等の大型草食獣から、
サル、ウサギ等の小獣、クジャク等の大型鳥類を捕食。
*備考*
インドネシアのスマトラ島に分布するトラの一亜種。現存するトラの中では最小。
主に密林に棲息するが、人の手の入った二次林や人里近くにも居を構える事がある。
これは、人の手が入った森のほうが、主な獲物としているシカや野ブタの個体数が多い為と考えられる。
色合いが他の亜種に比べて濃く、肩部より後ろの縞模様が二股に分岐するのが特徴。
また、オスは頬の毛や首筋のたてがみが長く伸びる。
厳粛な単独生活者で、森林内に広大な縄張りを構えて暮らし、
メス同士の縄張りは若干重複する。
ネコ類としては珍しく水を嫌わず、泳ぎも達者。
毛皮目当ての密猟でかなり数が減っており、最近確認された野生での個体数はおよそ450頭。
各国の動物園で血統管理をしながら飼育下での増殖が進められている。