レッサーパンダ
Lesser Panda (Ailurus fulgens)

19世紀の動物学者で博物学の大家、フレデリック・キュヴィエは、
初めてヨーロッパに齎されたレッサーパンダの標本を見て感動し、
彼等に「アイルルス・フルグェンス(炎色の猫)」と言う学名を与えた。
それから長い時が流れたが、
今でもレッサーパンダの栗色の美しい姿は、
多くの人々を魅了し続けている。

浜松市動物園での事。
飼育係の人がこしらえた丸太のテーブルの上で、
2頭のレッサーパンダが黙々と笹の小枝を齧っている。
一心不乱に食事を続ける彼等に、黄色い歓声が集まる。

観客の一人がカメラを取り出して一言。
「こっち向いて〜」
驚いた事に、手前のレッサーパンダがこちらをちらっと見て動きを止めた。
一斉にシャッターを切る音が続く。
沈黙が戻った刹那、彼はまた食事に取り掛かった。

そんな事が、同じ日、同じ動物園で幾度もあった。
カメラ慣れしていたのか、それとも好奇心が強い個体だったのか。
真実は彼しか知らない。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 クマ科(後述参照)
*分布*
ヒマラヤ、ミャンマー北部から中国南部にかけての山岳地帯
*大きさ*
頭胴長50〜60p、尾長30〜50p、体重3〜5kg
*食性*
植物食の割合が強い雑食。竹の葉、若竹等を主に食べる他、
どんぐりやキノコ等の他の植物質、昆虫、小動物や鳥の卵なども食べる。
*備考*
分類が定まっていない珍しい動物で、彼等の為にレッサーパンダ科を設立したり、アライグマ科に含む考えもあるが、
CITES(ワシントン条約)の分類法ではクマ科とされているので、当サイトではそれに従った。
山岳地帯の森林に家族単位の小さな群れで暮らし、食事は地上で行うが基本的には樹上生活者である。
大き目のネコくらいのサイズの非常に愛らしい動物で、栗色がかった美しい毛皮から、英語圏では「Red Panda」とも、
またティベットでの呼称から「Wah」とも呼ばれる。
通常四肢は黒っぽく頭部の色はやや明るめで、顔に特徴的な白班がある。
縞模様がある長い尾は、樹上で活動する時のバランサーとして機能するらしい。
ジャイアントパンダと同じく、前脚に種子骨が変形した「六指突起」を持ち、器用に竹の枝などを掴む事が出来る。
分布域の名を関した「ヒマラヤレッサーパンダ」「シセンレッサーパンダ」の2系統の亜種に分類される事が多い。