ニシクイトビ
Snail Kite (Rostrhamus sociabilis)
猛禽類は、生きる為に
一生の間に数多くの他の生き物を捕らえて食べる。
通常、彼等の世界を備さに知らない我々人間は、
猛禽類は餌になりそうな生き物なら
どんな生き物でも無差別に襲うものと信じがちである。
然し、実際には彼等にも専門の獲物と言うものがあり、
魚を狩るもの、小鳥を主に狩るもの、ネズミを専門に襲うもの、
ヘビを好むもの、屍肉を好むもの…など様々である。
中でも最も変り種の猛禽類がメキシコに棲んでいる。
彼等は特定の巻貝だけを専門に食べる。
他の獲物には目もくれない。
ユーカリしか食べないコアラ並みの偏食家である。
其処でついた名前が「ニシクイトビ」(螺喰鳶)。
こうした、特定の獲物に適応して進化した動物の事を
「スペシャリスト」と呼ぶ。
こうした動物は、進化を促すに至った環境が破壊される事に極めて弱い。
嘗て広範囲に棲んでいたニシクイトビも例外ではなく、
現在ではその分布域が以前よりずっと狭くなっているのは、悲しい事である。
<データ>
*分類*
鳥綱 鷲鷹目 ワシタカ科
*分布*
中米から南米にかけての湿地帯
*大きさ*
全長30〜43p、翼開長1〜1.1m
*食性*
肉食(貝食)。スクミリンゴガイと呼ばれる淡水性の巻貝を好んで食べる。
鉤型の長い嘴で殻の入り口から器用に中身だけを引き摺り出し、食べた後に残った殻は破壊せずに止まり木の下に捨てる。
*備考*
猛禽類きっての偏食家であり、特定の巻貝のみを食べる変わり者の鳥。
巻貝が豊富に棲息する湿地帯に小さな群れで暮らす。
全身黒味がかった灰色で、腹側の色はやや明るく、尾は白地に黒い帯がある。
また嘴と目の周囲の皮膚、及び脚は赤いので目立つ。嘴は細長い鉤型。
日中は休息し夕方に活発に活動するが、これは獲物の巻貝の行動パターンに合わせての適応だと見られる。
それぞれの個体が自分専用の止まり木を確保しており、獲物も其処で食べる。
普通の猛禽類は樹上に巣を作るが、この猛禽類は高い草叢の茂みに巣を作る。
湿地帯の開発が原因で数が減少している。