フォッサ
Fossa (Cryptoprocta ferox)
ヒトの暮らしが自然を圧迫するようになって幾星霜、
人々は時折自分達の元に訪れ、畑を荒らしたり家禽を盗む獣たちに対し、
過剰とも言える程の恐れを抱くようになった。
此処に紹介するジャコウネコの仲間、フォッサも、
御多分に漏れず過剰な恐れが生み出した迷信の元、
迫害され続けた動物のひとつである。
地元の農家の人達は言う。
「フォッサは家禽小屋に忍び寄ると、尾の付け根にある臭腺から悪臭を出し、
その悪臭で小屋の中の家禽を皆殺しにして、悠々とそれらを平らげる」と。
ニワトリやアヒルの嗅覚は非常に鈍いものであるし、
フォッサが臭腺から悪臭を放つのは身を守る時に限られているので、
実際にはこんな事は起こり得ないのだが、
土地の人々は大真面目にそれを信じていると言う。
こうした迷信や恐れを取り除き、動物を保護するのは非常に難しいモノである。
マダガスカル政府は、フォッサの保護の為に迷信の啓蒙を諦める代わり、
至極シンプルな政策を農家に科す事にした。
それはズバリ、
「家禽小屋はフォッサが進入できない頑丈なモノにする事」
である。
<データ>
*分類*
哺乳綱 食肉目 ジャコウネコ科
*分布*
マダガスカル島の森林地帯
*大きさ*
頭胴長60〜75cm、尾長60〜70p、体重8〜13s
*食性*
肉食。キツネザルや齧歯類等の小動物、小鳥、爬虫類などを襲う。
家禽を襲う事もあるので現地の人々には嫌われている。
*備考*
マダガスカル最大の捕食動物。
見かけはピューマの出来そこないみたいで、嘗てはネコ科に分類されていた事もあるが、
実際はジャコウネコの仲間で、その中でも取り分け特殊な仲間である。
短く滑らかな艶のある毛皮を持ち、色は赤褐色から黒褐色まで幅がある。
森林に通常単独で生活し、夜行性。
尾の付け根に臭腺があり、驚かされると悪臭を出す。
住環境の乱開発や密猟が原因で個体数は減少気味。
動物園での飼育例も少ない珍獣である。