ターキン
Takin (Budorcas taxicolor)

多摩動物公園で、初めてこの動物に出会った時の感動は、
今でも忘れられない。

ギリシア神話の「アルゴー探検隊」のエピソードを髣髴とさせる、
金色に輝く美しい被毛。
緩やかに捩れるツノ。
そして、穏やか、と言う語が相応しい気品ある顔つき。

しかし、少し距離を置いて見てみると、
彼等が決して見てくれの美しさだけの生き物でない事が判る。

屈強な体つき。
太く逞しい四肢とそれを支える頑丈な蹄。
金色の毛に艶を持たせる輝きは、
実は皮膚から特別な油状の分泌物が出ていて、
それで雨や夜露を弾き、寒さから身を守るのだと言う。

これらは全て、彼等が過酷な山岳地帯で生き抜く為の適応なのだ。

美しさの中にしたたかさを秘めた、
そんな彼等が益々好きになりそうな昨今である。
<データ>

*分類*
哺乳綱 偶蹄目 ウシ科
*分布*
中国西部の山岳地帯
*大きさ*
頭胴長2.1〜2.2m、体高1.1〜1.3m、尾長15〜20cm、ツノの長さ40〜60cm、体重230〜275s
*食性*
植物食。高山植物やササ、シャクナゲ、ヤナギ等の枝葉を好む。
*備考*
ニホンカモシカに近縁の山岳性の偶蹄類。
小柄のウシくらいの大きさで、がっしりとした体つきと膨れた鼻面、
独特のうねりを持つ太いツノが特色。
2亜種が知られ、金色の毛を持つゴールデンターキン(Golden Takin)B.t.bedfordiと、
やや褐色の毛を持ち、背中に黒い筋があるスーチョワンターキン(Stien Takin)B.t.tibetanaに大別される
(但し学者によっては分類に諸説あり)。
標高2400m〜4000mくらいの高山の森林に、メスと子供で小規模の群れを形成して棲息。
群れは夏には規模が大きくなるが、冬にはぐんと規模が縮小する。
老いたオスは普通単独生活をする。
夏季は酷暑を避け、新鮮な食べ物を求めて山の高地に移動し、
冬は寒さを嫌って谷間に移動する。
2亜種とも個体数が少なく、中国では第一等の保護動物に指定しており、
国外への輸出を厳しく制限している。