エリマキトカゲ
Scarf Lizard (Chlamydosaurus kingii)

あるTV番組で取り上げられた事を切欠にして、
一時期、エリマキトカゲの人気が急上昇した事がある。

日本各地の私設動物園やペットショップはこぞってエリマキトカゲを求め、
ニューギニアの島々から多くのエリマキトカゲが輸出されたと聞く。
だが、日本に齎された彼等の中で、長命を保った者は極めて少ない。

エリマキトカゲはその道化然とした外見とは裏腹に、実は獰猛で神経質な性質の持ち主の為、
ペットとしては不向きな生き物なのだ。
その上、彼等は生きた小動物か、死んで間もない生き物しか口にしない。
生き餌を食べる生き物と言うのは餌の確保が難しい為、
それだけで飼育に一層の困難が伴うのである。
日本に持ち込まれたエリマキトカゲの多くが、飼育環境下のストレスや飢えで死んだ。

空前のエリマキトカゲブームから既に10年以上経つ。
今、エリマキトカゲは嘗てほど見向きもされなくなったが、
それは彼等にとって却って幸せな事である。
<データ>

*分類*
爬虫綱 有鱗目(トカゲ亜目) キノボリトカゲ科
*分布*
オーストラリア北東部やニューギニア諸島の砂漠地帯
*大きさ*
全長65〜90cm(最大で1mほど)、体重300〜500g
*食性*
肉食性。アリやコオロギ等の昆虫類、クモ、ネズミ等の小型哺乳類が主食。
基本的に生きているか死後間もない新鮮な獲物しか口にしない。
*備考*
首の周りに特徴的な“エリマキ”を有する大型のトカゲ。
通常は樹上に住むが、餌を探す時などに時折地上に降りる事が有る。
エリマキは舌骨の一部が伸びたものに丈夫な皮膜が貼った物で、
口を大きく開く事により広げられ、鮮やかなオレンジや黒の斑紋が表れる。
エリマキは天敵に脅かされた際に相手を威嚇する時、
また、繁殖期のディスプレイや体温調節用のラジエータ代わりにも用いられるらしい。
ごく短時間ならば後脚で立ち上がり、尾でバランスをとって疾走する事が可能。
奇抜な外見や、地上を2速歩行で疾走する珍妙な姿がマスメディアで紹介されて人気を呼び、
嘗ては(主にニューギニアの個体群が)ペットや動物園向けに多数捕獲された。
今では原産国によって完全に保護されており、オーストラリアの個体群は捕獲が禁じられている。