キュウカンチョウ
Greater Hill Mynah (Gracula religiosa)
最近ではあまり見かけなくなったが、
昔、私が幼少の頃はキュウカンチョウを飼育している家が多かった。
朝、学校へ行く道すがら、方々の家から
「オハヨウ」「キューチャン」などの声が聞こえたものだ。
キュウカンチョウの人語を真似る能力は古くから取り沙汰されていて、
西暦600年頃の古書物にも既に詳しい記述がある。
要約すると次の通り。
「キュウカンチョウは南方の産で、羽毛は青黒く、首に赤っぽい部分がある。
聴力が優れ頭の回転が速く、舌先が非常に器用で、
人の言葉、あらゆる鳥の言葉、区別無く使いこなす事が出来る。
故に人々はキュウカンチョウの事を
『能言鳥(のうげんちょう、よくモノを言う鳥の意)』とも呼ぶのである」
ところで、キュウカンチョウとは日本でつけられた名称だと言う話をご存知だろうか。
日本に初めてこの鳥が持ち込まれた時の話。
この鳥を日本に持ち込んだのは「九官」と言う名前(役職?)の中国出身の人だった。
彼はこの鳥に自分の名前を覚えこませ、方々で披露して人々の驚きを誘った。
この時、九官氏が「この鳥は私の名前を呼んでいる」と話したのが、
何時からか「鳥が自らの名前を呼んでいるのだ」と言う風に解釈されて、
「九官鳥」の名前がついたのだと言う。
因みに中国本土では嘗てこの鳥を「秦吉了(しんきつりょう)」と呼んでいたらしい。
現代では何と呼んでいるのだろうか。
<データ>
*分類*
鳥綱 燕雀目 ムクドリ科
*分布*
インドを中心にヒマラヤ山系、中国南部、東南アジア全域の森林地帯
*大きさ*
全長25〜38cm、体重160〜180g
*食性*
果実中心の雑食。花の蜜を吸ったり、昆虫を捕まえて食べたりもする。
飼育下では、専用の飼料を与える。
*備考*
飼い鳥として非常に有名な鳥だが、最近はセキセイインコやジュウシマツ等に押され、日本では飼育数が減少傾向にある。
羽色が黒っぽく一見カラスに似るが、尾が短く嘴は赤く、首筋に目立つオレンジ色のトサカがある。
本来は東南アジアに棲む野鳥で、森林の樹幹部に小さな群れを作って暮らしている。
ペチャクチャと囀るようにやかましく鳴き、又高低の差が激しいさまざまな鳴き声を使い分ける。
飼育下で人間の声を含む様々な音を覚え、真似するのは有名。
高い樹の幹に開いた洞にカップ型の巣を作って繁殖する。
地域によって体の大きさに差があり、最大級の亜種はハト位の大きさになる。