シビレウナギ
Electoric Eel (Electorophorus electoricus)

南米アマゾンの大河には、
シビレウナギと言う変わった魚が住んでいる。
彼等は文字通り、天敵や獲物を「痺れさせる」為に、
生物としては異例なほどの放電能力を持つに至った。

ヒトの背丈ほどの長さのシビレウナギ1匹で、
人間やウマを気絶させるに十分足る程の放電が可能だと言う。

南米に暮らすガウーショ(牧童)達は、シビレウナギのこの特技に目をつけた。
ヒトの手を逃れ野生化したウマを捕獲する時に、彼等の電気を利用したのである。

荒れ狂うウマの群れを、シビレウナギが潜む河まで追い込み、
ウマが川に踏み込んでさえくれれば半ばこの狩りは成功したようなものである。
驚いたシビレウナギの放電で、川に足を踏み入れたウマ達は瞬時に気絶してしまう。
後は溺死しないうちにウマを生け捕って成功!である。

そんなシビレウナギだが、然し、複数で現れた時は逃げた方がいい。
何故なら数匹のシビレウナギが一気に放電すれば、人間くらいは簡単に死に追いやる事が出来るから。
<データ>

*分類*
硬骨魚綱 ギムノトゥス目 シビレウナギ科
*分布*
南米オリノコ川、アマゾン川とその支流
*大きさ*
全長1.5〜2.5m、体重20kg以下
*食性*
肉食。小魚やエビなどの小動物を捕食。
発電器官で餌の居場所を探り当て、一気に放電して相手を感電死させ、悠々とそれを平らげる。
*備考*
「デンキウナギ」とも呼ばれる。
ウナギと名がつくが所謂狭義のウナギとは全く無縁の生き物で、寧ろコイやナマズの仲間に近縁。
所謂「発電魚」のひとつで、通常でも600〜650V、最高で860Vもの放電が可能。
ウナギに似た長い胴体は背鰭も腹鰭も臀鰭も全く退化しており、
筋肉が変形した特殊な発電器官が納まっている。
この発電器官が全長の9割を占める為に他の内臓は殆ど体の前部分に集中して収まっており、
排泄孔が顎の直ぐ下に開いているのも特徴のひとつ。
非常に優れた嗅覚を持つ一方、視力は殆ど退化しており、特に老年個体ではほぼ盲目に近い状態になる。
濁った水域に通常単独で生活する。繁殖形態など、その行動は未だに不明な点が多い。
口内の粘膜から空気を取り込んで呼吸したり、後ろ向きに泳ぐ事が出来る等、変わった習性の持ち主。