ヤギ
Domestic Goat (Capra hircus)

板橋区の子供動物園での話だ。

ヤギの檻の前に大きなパネルが掲げられている。
何事かと思って覗き込んだ私は絶句した。
其処に張り出されていたのは、死んでしまったヤギの写真や、
司法解剖の為腑分けされるヤギの写真、更に消化器官内の異物の写真など、
目を覆いたくなるような悲惨な状況の写真群だったのだ。

パネルの説明によれば、過日、突然死んだヤギがいて、不審に思い腑分けをしたところが、
胃袋の中から大量の紙とビニールが出て来たのだと言う。
死因は体内に異物が詰まり過ぎた為の消化器不全だとの事。

動物園でヤギに紙を齧られたと言う話は多い。
だがそれは、例えて言うなら人間の赤ちゃんに乳歯が生じる際、
違和感から何でも口に運ぶ、その行為に近いものなのらしい。
決して彼等が紙を常食にしていると言う訳ではないのだ。
にもかかわらず、不心得な客がわざとヤギに紙を食べさせたりするのだと言う。
かのヤギはその心無い行為の犠牲になったのであった。

動物園へお出かけの皆様へ。
ヤギと触れ合う機会があっても、決して彼等に紙を食べさせたりしないで下さい。
私の強い願いです。
<データ>

*分類*
哺乳綱 偶蹄目 ウシ科
*分布*
世界各地
*大きさ*
頭胴長1〜1.2m、体高60〜70cm前後、体重20〜70s(種類によって様々)
*食性*
植物食。主に木の葉を好むが、その他の植物質も選り好みせず食べる。
*備考*
所謂家畜の「ヤギ」は紀元前3500年頃より、
野生のヤギ(ペルシアヤギ)を飼い慣らして品種改良した物と考えられている。
ヒツジと混同されがちだが、ツノの断面がひょうたん型若しくは四辺形である事、
オスの顎にヒゲが生える事、尾の付け根に臭腺がある事で区別される。
搾乳用品種(ザーネーン種、トッケンブルグ種など)や毛用品種(カシミア種、アンゴラ種)など、幾つかの品種が有る。
家畜として主に中東周辺、西アジア各地を中心に飼育される他、
大航海時代に野生化した個体の子孫が世界各地に帰化している。
活発な動作と良くヒトに馴れる性質から、動物園でも人気がある。