インドクジャク
Blue Peafowl (Pavo cristatus)
春ももうじきと言う3月初旬のある日、
伊豆のシャボテン公園まで遊びに出かけた。
その年はニュースでひっきりなしに「暖冬」と言う言葉が流されていた年だった。
確かにその日も暖かい日だった。
冬らしからぬ日差しに、春を告げる花が園内のあちこちで咲いていた。
クァオーーーーーー!
園内に放し飼いにされているクジャク達が甲高い叫びを張り上げている。
よく見ると、あちこちでオスのクジャクが飾り羽根を広げて求愛のダンスを踊っていた。
飼育係の人が言う。
「今年は暖冬だった所為か…クジャクの求愛行動が例年より早いですね。
ツルの“恋鳴き”も凄く早かったですよ」
早すぎる春が、眠っている彼等の情熱を呼び覚ましたのか。
帰り際、夕闇に飾り羽根を震わせるクジャク達を見て、一句。
暖冬や 妻乞う鶴は 狂い鳴き
孔雀の尾羽(おは)は 狂い咲きかな 熊猫
<データ>
*分類*
鳥綱 鶉鶏目 キジ科
*分布*
インドからネパール、パキスタンにかけての草原地帯
*大きさ*
全長1.8〜2.3m(オス、但し長さ1.2〜1.6mの飾り羽含む)0.9〜1m(メス)、体重4〜6s(オス)2.5〜4s(メス)
*食性*
雑食性。穀物の種子や液果、昆虫の他、トカゲやネズミ等の小動物、時にはヘビをも食べる。
飼育下ではニワトリ用の飼料に青菜を刻み入れた物をよく与える。
*備考*
インドの国鳥(国を象徴する鳥)。低地から標高1500mまでの林や林縁に棲息する。
宝石のような美麗な羽毛と、目玉文様が鮮やかな飾り羽が特徴的。
但しこれはオスの特徴で、メスは褐色味の強い羽色を呈し、飾り羽を持たない。
飾り羽は一見尾羽のように見えるが、実は腰の部分に生えている上尾筒と言う羽毛が変形したもので、
多い個体では150本以上も生やしている。
本来の尾羽はこの飾り羽の下にあり、下部から飾り羽を支える役割をする。
飾り羽は繁殖期の春先に特有のもので、夏が過ぎ秋が近づく頃には抜け落ちてしまう。
この飾り羽を扇型に広げ、震わせながら行うディスプレイは壮観。
地上性だが、夜は決まった樹上の枝で休息を取る。
よく通る鐘の音のような鳴き声をあげる。
古くから愛玩用の家禽として飼育され、白色型(シロクジャク)を始め幾つかの羽色変化がある。