ウサギコウモリ
Brown Long-eared Bat (Plecotus auritus)

みちのくの昔話。

動物達がまだ仲良く暮らしていた頃の事。
イタチとノネズミが「寄り合い田」(共同で田畑を運営する事)を行い、アワを育てていた。
ところが、ある時このアワが一夜にして盗まれると言う事が起きた。
実は、アワ泥棒の犯人はノネズミだった。
それを知ったイタチは深く憤り、アワ泥棒のノネズミ達に相応の罰が下るように神に祈った。

その祈りが通じたのか、
ノネズミ達はその姿をコウモリに変えられてしまい、
夜しか行動できず、ちっぽけな虫けらしか食べられない惨めな暮らしをする事となった。

今でもみちのくの古老は子供達にこう言い聞かせるそうだ。

「他人の物を盗む不届き者は、コウモリにされるぞ」
…と。



コウモリにとっては迷惑な話かも知れない。
<データ>

*分類*
哺乳綱 翼手目 ヒナコウモリ科
*分布*
ヨーロッパからアジアにかけての森林地帯
*大きさ*
頭胴長4〜6cm、翼開長23〜30cm、体重5〜13g。メスの方がやや大きい。
*食性*
昆虫食。夜行性の昆虫なら何でも食べる。特に大型のガやセミを好んで襲う。
捕らえた獲物を口に咥えたまま塒に戻り、其処でゆっくりと賞味する習性がある。
*備考*
大きな耳(頭胴長の4分の3もある)が特徴的な小型コウモリ。
樹洞や岩窟等に20匹までの群れで暮らし、薄暮型の夜行性である。
群れで生活する割には協調性に乏しい生き物で、
特に住処を出て採食に出かける際など、個体間の小競り合いが絶えない。
柔軟な翼で思いのほか素早く飛び、空中の昆虫を巧みに捕まえる。
昆虫を捕食する際には、空を飛ぶ道具である翼がそのまま「補虫網」の役目も果たすようだ。
餌の得られない冬季は岩窟や坑道等に寄り集まり、冬眠する。
他の小型コウモリに比べて適応力が低く、ヒトの手が介入したような環境には住まない。
その為、世界各地で個体数はやや減少気味である。