タテガミオオカミ
Maned Wolf (Chrysocyon brachyurus)

世界の動物に変わり者と言われる存在は数あれど、
タテガミオオカミほど変わっている奴はそうはいないのでは、と思う。

彼等はイヌ科に属する列記とした食肉動物である。
だがしかし。
驚いた事に、彼等はイヌの仲間でも随一の「甘党」なのだ、と言う。
落果やベリー類は言うに及ばず、サトウキビを殊の外好物とし、
時折畑を荒らしてしまう…と言うのだから驚きである。

とある動物園で、本当に彼等が甘党なのか確かめる為、
皮を剥いて削ぎ切りにしたサトウキビを試みに与えた事があった。
結果は…与えた側の予想を遥かに裏切るモノだった。
彼等は間髪いれずサトウキビに齧りつき、あたかもライオンが骨付き肉を噛み砕くかの如く、
バリバリとそのサトウキビを平らげてしまった、と言うのだ。

そしてもっと驚くべき事は、それほどまでの甘党なのに、
彼等は決して余分な肉がつかず、常に貴婦人然としたスタイルを維持し続けていると言う事。
ダイエットに悩む世の女性方が聞いたら、さだめし悔しがるだろう事請け合いである。

最も、彼等の動きは非常にエネルギーを消費するようなので、
その為に高カロリーな食べ物を欲すると考えた方がすんなり納得できるのだが…。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 イヌ科
*分布*
ウルグアイからアルゼンチン北部、アンデス山脈東部にかけての草原地帯
*大きさ*
頭胴長95〜132cm、尾長30〜50p前後、体高74〜85p、体重20〜26kg
*食性*
雑食。様々な小動物や鳥類、昆虫の他、
落果やベリー類、サトウキビ等の植物質をかなりの頻度で摂食する。
*備考*
又の名を「アシナガイヌ」(足長犬)と言う。オオカミと名がつくが寧ろキツネに近縁の動物。
イヌ科の動物の中でもかなり大型の部類に入り、大型のヤギ位の大きさになる。
すらりと伸びた四肢、黒いタテガミ、艶のある赤褐色の毛皮が特色。
長い四肢は丈の高い叢で行動する事に適応したモノで、普段はこの長い足がもつれないように、
同じ側の前肢と後肢を同時に前に出す、所謂「側対歩」(そくたいほ)で歩く。
また、足が長いだけあって走るのが速く、そのスピードは時に時速90kmに届く事さえあるらしい。
性質はやや神経質。夜行性で昼間はねぐらでじっとしている事が多い。
彼等の骨を粉にして服用するとお産の時の様々な症状に効き目があるという俗信の為、
過度に乱獲され、非常に個体数が少ない。