カモノハシ
Duckbilled Platypus (Ornithorhynchus anatinus)

18世紀末、イギリスの大英博物館にひとつの標本が持ち込まれた。

平べったいカワウソのような体に、手足は細い指が5本、大きく発達した水掻き。
そして吻部にはカモのような嘴。

標本を受け取った科学者は、これを香具師が作った偽者の標本だと思った。
当時、サルと大型の魚を縫い合わせて「人魚」としたり、
ガンギエイのミイラを裁断して「飛龍」と銘打って公開する香具師が多かった為である。
科学者は隠れた縫い目を探し出そうとし、
鋏を取り出して嘴と胴体の境を切り離そうとした。

だが、途中まで鋏を入れてみて、その標本に全く不自然な点が無い事に科学者は気が付いた。

後、多くの標本や生きた個体が齎され、
その生き物がまがい物ではなく、紛れもなくこの地上に生きている珍獣だと知られるようになった。

…カモノハシが学会に登場した時の面白いエピソードである。

この時の標本は、今でも大英博物館に残されているそうである。
<データ>

*分類*
哺乳綱 単孔目 カモノハシ科
*分布*
オーストラリア東部とタスマニア島の河川流域
*大きさ*
頭胴長30〜45cm、尾長10〜15p、吻部長5.5〜6.5cm、体重0.5〜2s
*食性*
昆虫食の割合が強い肉食。
淡水性の甲殻類や小魚、蛆虫、水生昆虫やその幼虫、カエルなども食べる。
*備考*
最も原始的な哺乳類のひとつで、子供を「卵」の状態で産み落とす
(生まれた子供はちゃんと親の乳を飲んで育つ)事であまりにも有名。
体型はカワウソなどの水棲哺乳類に似て、口先がカモの嘴のような形をしているのが特徴。
穴掘りなどに使われる鋭い爪と大きな水掻き、そしてオスはイヌを殺傷するほどの毒を有する蹴爪を持つ。
嘴はカモのそれと異なり、中が空洞で鋭敏な神経系が集束している。
これは小動物が水中で出す微弱な電波を感知し、水中で餌を探す際の探知機としての役割を果たす。
水中では耳孔と目を完全に閉じてしまうので、この探知機の存在は重要である。
ビロードのような毛皮を狙われて一時期は多数が捕獲され、個体数が著しく減った為、
現在では法律で厳しく保護されている。