ミズネズミ
Australian Water Rat (Hydromys chrysogaster)

ニュージーランドのヒツジ飼い達の間で、
奇妙な未知の哺乳類が信じられている。

有袋類とヒツジと人間と、僅かな種類のコウモリしかいない
(と、通常は考えられている)筈のニュージーランドの島に、
奇妙な水棲哺乳類が出没すると言うのである。

大きさはアヒルくらい。
大きく発達した後脚と小さな前脚を持ち、尾は長く、耳は小さい。
濃い褐色の艶やかな体毛を持つ。
驚くとカワウソのように水の中に飛び込んで逃げる―。

学者達は、「これは新種の動物かも知れない」と色めき立った。
それも、哺乳類の進化の黎明期に派生した、古い哺乳類の生き残りかも知れない、と。
…然し、懸命な捜索にも関わらず、
その未知の哺乳類は未だに発見されていない。

所処で、ニュージーランドの隣国オーストラリアには、
この未知の水棲哺乳類に極めてイメージが近い生き物が居る。
名を「ミズネズミ」と言う。
彼等はカワウソやイタチが棲息しないオセアニアの地域において、
他所の大陸では彼等の占めるべき生態系を独占すべく進化した齧歯類の一種である。

若しかしたら、ニュージーランドの未知の水棲哺乳類は
このミズネズミに近縁の動物では無かろうか?
目撃情報とミズネズミの身体的特徴は、
これでもかと言う位良く似通っているのだ。

但し、ミズネズミの仲間がニュージーランドに棲息すると言う
確かな証拠は、未だに得られていない。
<データ>

*分類*
哺乳綱 齧歯目 ネズミ科
*分布*
オセアニア(ニューギニアからオーストラリア東部、タスマニアにかけて)の湖沼
*大きさ*
頭胴長29〜39p、尾長23〜35p、体重0.65〜1.25kg
*食性*
肉食。淡水性の巻貝や小魚、カエル、カメ等を捕食する。水鳥やハツカネズミ、コウモリを襲う事も。
二枚貝などは捕まえた後、陽だまりの岩の上に置いて、太陽熱で殻が開くのを待つ習性がある。
*備考*
沼や池に棲む事から「Beaver Rat」とも呼称する。オセアニアに住むネズミ類の中では最大。
水棲齧歯類の中では最も捕食性が強く、哺乳類や鳥類を日常的に獲物にするほぼ唯一の種類。
灰色がかった褐色の毛皮と、豊かな頬ヒゲ、先端が白い太く黒味がかった尾を持つ。
後脚が極めて大きく発達し、水かきがあるのも特色のひとつ。
薄暮型の夜行性動物で、住環境として常に水が豊富にある地域を必要とし、
完全に手付かずの環境よりもある程度人間の手が入った環境を特に好む。
毛皮目的で稀に狩猟の対象にされる事がある。動物園での飼育例は殆ど知られていない。
地域によっては割と普通に見かける動物であるが、オーストラリアでは保護の対象下にある。