ゾリラ
Zorille (Ictonyx striatus)

「並行進化」と言う言葉がある。
比較的類縁のある動物が、違う分布域で同様の生態的地位に進化した結果、
互いによく似た姿に進化する様を指して言う。
(因みに、全く類縁の遠い動物…例えば有袋類のフクロオオカミと食肉類のイヌのように、
“目(もく)”の異なる動物同士が同様の進化を遂げる事を「収斂進化」と言う)

此処に紹介するゾリラはその典型的な例のひとつであろう。

予備知識無しにこの動物を見た時、大抵の人が
「あ、スカンクだ」と言う。
ふさふさの尻尾、こじんまりとした体、白黒の毛皮…
確かにこれでもかと言うくらいゾリラはスカンクに似ている。
驚かすと強烈な悪臭を持った分泌液を飛ばして
外敵から身を守る習性もスカンクそのものだ。

スカンクは南北アメリカに特産の動物、かたやゾリラはアフリカ特産の動物である。
ゾリラの事を「アフリカのスカンク」と俗称する人もままある。

スカンクもゾリラも、両者ともイタチの仲間と言う事では共通している。
しかし、スカンクとゾリラは進化の早いうちから枝分かれした動物…
より詳しく言えば、ゾリラはむしろ
今愛玩動物として有名な「フェレット」に近縁の動物なのである。

イタチの仲間では、こうしたケースが他にも幾つか確認されている。
些細な事だが、こう言う所処にも進化の謎は隠されている。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食肉目 イタチ科
*分布*
サハラ砂漠以南のアフリカ(スーダンから南アフリカにかけて)の草原地帯
*大きさ*
頭胴長28〜38cm、尾長20〜30p、体重1〜1.4kg
*食性*
肉食。ネズミ等の小型の哺乳類、トカゲ等の小型爬虫類、昆虫、地上性の鳥類の雛や卵などを捕食する。
*備考*
アフリカ各地の乾燥した地域に棲む、地上性の小型肉食動物。
ふさふさとした被毛と独特の白黒模様が特徴的。爪は鋭く、尾は長い。
地上性だが木登りや水泳も巧い。
驚かすと肛門部にある臭腺からきつい臭いのある分泌物を相手に浴びせかけて身を守る。
また、悪臭で怯まない相手に対しては「死んだ振り」をして油断させ、隙を見て逃げると言う芸当もする。
悪臭で身を守る習性も含め、一見同じイタチの仲間のスカンクに類似するが、
スカンクとは別の系統に属する動物。
性質は割におとなしく、飼い馴らしてネズミの駆除に用いられる事がある。
名前はスペイン語でキツネを意味する「Zorro」からの転化。