*恐るべき歯を持つ河童*
「雁木小僧」(がんぎこぞう)は河童の一種、若しくは河童に非常に近い仲間の妖怪で、鳥山石燕の妖怪画にその姿が見える。
他の河童に比べると毛むくじゃらで、鋭い牙が特徴的だ。そもそも「雁木」とは鋭利な刻みが入った歯車の一種「雁木車」(がんぎぐるま)に因む命名だと言われており、その牙がまるで雁木車の刻みにも似たモノであるが故の命名のようだ。絵に添えられた解説には「その歯の鋭き事まるでやすりの如し」と記されている。
一説には「岸崖小僧」とも書き、岸辺に好んで生息する事からの命名であると言う。
特に人畜に被害を為す訳では無いが、魚や甲殻類を捕らえて食べる時の凄まじさは筆跡に尽くしがたく、獲物を噛み砕く時の音は四方に響いて、それは恐ろしげなモノだったらしい。魚を商いする担ぎ屋などは、これに出くわすと安価で大きな魚を一尾放り投げて、後も見ずに逃げるようにその場を離れたものだと言う。