オーストラリアハイギョ
Australian Lungfish (Neoceratodus forsteri)

ハイギョ(肺魚)の発見は、当時の学会を大いに驚かせた。
19世紀初頭の頃の事である。

「進化論」が一般に浸透するに連れて、学者達が抱いた共通の望み。
それは「ミッシング・リンク」…
つまり進化の過程上に存在する中間型の生物を発見する事だった。
実際この時期、脊椎動物の端緒に一番近い生き物であるナメクジウオや、
哺乳類と爬虫類の中間的生物カモノハシなど、
様々な中間型の生物が発見され学会に発表されている。

学者達がハイギョに注目した理由。
それは、当事の学者達が彼等を両生類と魚類の中間型生物だと考えていた事だった。
実際、ハイギョは浮き袋が変形した擬似的な肺を持ち、空気呼吸をする。
また、鰭の一部に筋肉がついて体を支える事が出来るが、
この特徴が長じて「脚」を発達させた理由だとも言われた。

実のところ、ハイギョが本当に両生類と魚類の中間型なのか、それとも違うのかは、
21世紀になった今も論争に決着がついていない。
化石による資料が乏しく、これと言った決定的証拠が存在しない為である。
ハイギョの生きた個体が発見された当初は盛んに論じられた「ハイギョ=両生類の祖先」説も、
一時期は化石による物証を論拠に廃れた。
が、最近その論拠を根底から覆す発見が在り、この説は再び日の目を見た形である。

この学説が何時決着を見るのか…。
いずれ決定的な証拠が見つかるかも知れない。

最も、今目の前で泳いでいるハイギョにとっては、全く預かり知らぬ事だろうけど。
<データ>

*分類*
硬骨魚綱 ハイギョ目 セラトドゥス科
*分布*
オーストラリア・クイーンズランド州の河川・湖沼
*大きさ*
全長1〜1.8m、体重20〜43kg
*食性*
やや捕食傾向が強い雑食性。小魚やカエル等の小動物、エビ等の甲殻類や水藻類が主食。
飼育下ではバナナなどの植物質を好む傾向があると言う。
*備考*
現存する硬骨魚類では最も原始的なもののひとつで、南半球に局地的に分布するハイギョ類3種の内の一種。
ハイギョ類は、浮き袋が変形した「肺」で空気呼吸する事が出来る変り種の魚類で、
この特徴は進化的に後の両生類以降の脊椎動物にに繋がる物として注目されている。
最も、この種については、ハイギョの中でも最も原始的な種類であり、「肺」の発達は他の2種に比べてあまり良くないと言われる。
その為、普通の淡水魚と同じく水が無いと短時間しか生きられない。
「肉鰭」と呼ばれる、筋肉の発達した強い鰭を持つのも特徴のひとつ。
嘗てはペットとして需要が高く、また食用に多数捕獲され、数が激減した。
現在はオーストラリア政府とワシントン条約の厳粛な保護下にあり、養殖の研究も盛んである。
繁殖可能なサイズに成長するまで20年近い歳月を要し、100年以上も生きると言われている。