オウギバト
Victoria Crowned Pigeon (Goura victoria)

物言わじ
父は長柄の人柱
鳴かずば雉も
射たれざらまし

昔話に伝えられる短歌のひとつである。
…余計な事を口走ったが為に、我が父は人柱にされた。
キジよ、お前も大声で鳴き叫ばなければ、
弓でむざむざ射殺される事もなかったろうに…と言う意味である。

いったいに鳥類には、逃げる時に仲間に警戒を促す為、
周囲に響き渡る大声で鳴き叫ぶ種類が少なくない。
逃げ切れるだけの飛翔力が伴えば言う事は無いのだが、飛ぶ力が弱い鳥がこれをやると、
鳴き声を上げた鳥は狩人の残酷な一撃に命を奪われると言う寸法になる。

ニューギニアの森林に、カンムリバトと言う大きなハトが棲息している。
この鳥も、逃げる時に大きな声で鳴く習性がある。
しかも、仲間の一羽が射殺されると、一旦は逃げるものの、間をおかずに近くの樹に止まり、
まるで仲間を殺した者を非難をするかの如く大声で叫び続けると言われる。
狩人にとっては、これはまこと都合の良い習性だった。
一羽仕留めた後、時間を置いて待っていれば、
大勢の獲物が自らその存在を示してくれるのだから。

かくしてカンムリバトは、狩り尽くされかけて大いにその数を減らしてしまった。
自己主張も時と場合による、と言う事か。
<データ>

*分類*
鳥綱 鳩鴿目 ハト科
*分布*
ニューギニア北部の森林地帯
*大きさ*
全長75〜80p、体重2〜2.5s
*食性*
主に果実食。地上に落ちた様々な果実、液果、種子を食べる。
時々昆虫やカタツムリなども食べるらしい。
*備考*
ニューギニアに棲息するカンムリバト類3種のひとつで、ハト類最大種。
別名を「ヴィクトリアカンムリバト」とも言う。
目も醒めるような明るい青を呈した羽毛と、名前の由来ともなったレース状の大きな冠羽が特徴。
繁殖期に、オスはメスの目前でこの冠羽を誇示し、尾羽を振りかざして非常に大袈裟なディスプレイをする。
大抵地上で活動するが、時には摂食行動の為に木に登る事も有るし、
ねぐらや繁殖目的の巣作りの場所は大抵の場合、大木の枝の上に求める事が多い。
「ウォー、ウゥー」と聞こえる非常に太い声で鳴く。
嘗てはその羽毛を狙われて多くが捕獲され、絶滅の危機にあったが、現在では保護されている。