シマハイエナ
Striped Hyena (Hyaena hyaena)
ハイエナの事を「卑しい動物」と蔑む声を多く聞く。
世間一般のハイエナのイメージは
「屍肉漁り」
「草原の掃除屋」
「ライオンの先棒担ぎ」
など、どれも不名誉且つ、
ハイエナにとっては謂れ無き中傷そのものである。
この世界には、純粋な狩人でいられる肉食動物など存在しない。
百獣の王、と呼ばれるライオンでさえも、
機会があれば積極的に屍肉を餌資源として利用するし、
自分達が狩りに失敗した時は他者の獲物を横取りすると言う暴挙を働く事がある。
他方、屍肉しか食べないと言われるハイエナ達は、
実際は優れた技量を持つ優秀なハンターである。アフリカでは、
「スタンピード(暴疾走)するウシを屠る事が出来るのはハイエナとライオンだけ」
と言う言い回しさえある。
つまり、ハイエナとライオンは同レヴェルの狩りのスキルを保持すると考えられているのである。
屍肉に餌資源の一部を依存するのは、
狩りに費やされるエネルギーを節約する上で野生の肉食動物にとっては
非常に理に叶ったサヴァイバル術である。
それを、表面的なイメージから「卑しい」「誇らしい」等とランク付けするのは、
人間のエゴ以外の何者でもないと思う。
寧ろ、屠殺業者に食肉の処理を一任し、
ビフテキを貪りながら「俺達は殺していない」等とのたまうブルジョア階級の人間の方が、
余程根性が卑しいのでは在るまいか。
<データ>
*分類*
哺乳綱 食肉目 ハイエナ科
*分布*
アフリカから中東、アジア西部にかけての草原地帯
*大きさ*
頭胴長90〜120cm、尾長25〜35p、肩高65〜80cm、体重30〜50s
*食性*
概ね肉食。生死を問わず肉なら何でも食べ、死魚や甲殻類、昆虫や植物質も食べる。
屍肉を食べる際は頑丈な顎で骨までバリバリ噛み砕く。家畜や家禽を襲う事もある。
*備考*
見かけは縞模様を持つイヌのようだが、遺伝学的にはイヌよりジャコウネコに近い。
首筋のタテガミ状の長毛、ひょろっとした四肢、頑丈な顎が特徴。
顎とその筋肉を支える為前半身がよく発達しており、
その為後半身はやや貧弱な印象を受ける。
通常、単独かつがいで行動し、住環境として藪や岩がちな土地を好む。夜行性である。
性質は肉食動物としては大人しい方だが、襲われれば唸り声を上げ、牙を剥いて威嚇する。
人間の笑い声に似た奇妙な声で鳴くのが特徴。