アイアイ
Aye−aye (Daubentonia madagascariensis)
いびつな猫のような体つき。大きなコウモリのような耳。
ぼさぼさの体毛。ふさふさした尻尾。そしてネズミのような門歯。
マダガスカル島に生息する変り種の霊長類、
アイアイはおよそサルのイメージからかけ離れた生き物である。
学者達は、この動物が何の仲間であるかとんと見当がつかず、
リスやネズミと同じ齧歯類に分類したり、原始的なコウモリの仲間だとしたり、
様々な憶測を為した。
彼等が原始的ではあるもののサルの仲間であると判明したのは、
学会に発表されてから実に100年近く後の事だったと言う。
現地の人々はその異相から彼等を悪魔の化身と見なし、見つけ次第殺し、巣を破壊した。
加えて近年の大々的な開発。
今や彼は地球上で最も絶滅の危機が高い獣と呼ばれている。
何と不名誉な称号だろうか。
先頃、上野動物園に日本で初めて搬入されたアイアイのつがいに、
待望の赤ちゃんが生まれた。
上野動物園を始め、マダガスカルの動物園を中心に世界各国の動物園が、
彼等の命脈を保つ為に血の滲むような努力を続けている。
動物園関係者の努力が実を結ぶ事を願い、赤ちゃんアイアイの健やかな成長を祈願したい。
<データ>
*分類*
哺乳綱 霊長目 アイアイ科
*分布*
マダガスカル島東部の森林地帯
*大きさ*
頭胴長40cm前後、尾長40〜60p、体重2〜3kg
*食性*
雑食性だが、特にラミー(マダガスカル特産のカンラン科植物の堅果)を好む。
他に樹中の虫類やその幼虫、サトウキビ、鳥の卵など多彩。
*備考*
世界で最も希少な霊長類のひとつ。
キツネザル類に近縁だが進化の早い時期に枝分かれして別々の方向へと進化した動物で、
彼等の為に独自の科が設けられている。
ぼさぼさの長い黒毛に覆われ、耳と目は大きく発達している。
何より変わっているのは前足(手)。中指が異常に細長く、
親指以外の爪が「鉤爪」で、親指のみ人間や他のサルと同じ「平爪」になっている。
この長い中指は摂食の時、堅果の髄や卵の中身をせせる「スプーン」の役割を果たし、
又樹に穿った穴から虫を引きずり出す「鉤棒」、果実の熟し具合を叩いて検診する「聴診器」の役割も持っている。
厳粛たる夜行性の動物で、昼間は全く外に出ない。基本的には樹上性。
絶滅の危機に瀕しており、早急な保護政策が叫ばれている。