ゴリラ
Gorilla (Gorilla gorilla)

雨降りの日。
鉛色の空からしとしと降り続ける雨を忌み嫌うかのように、
ゴリラ達は雨よけのケージの中で身じろぎもしない。

聞けば、ゴリラは濡れる事を極端に嫌う動物だ、と言う。
野生では熱帯雨林で暮らしている彼等だが…。
何とも不思議な気がしないでもない。

ケージの床一面に敷き詰められた麦わらの隙間を、
ゴリラ達が一生懸命に探っている。
麦わらの中には、何種類ものナッツが撒かれているとの事。
雨の日の退屈しのぎに飼育係の人が考案したものらしい。

アフリカのとある部族の間では、
「ゴリラは神がまだ存在していた時代、ヒトである事を辞めて森へ帰った者達の子孫だ」
と言い伝えられている。
これは科学的にも正しい事である。

ゴリラは森と共に生きる道を選び、
ヒトは森を破壊し果ては仲間同士殺しあう生き物に進化した。

果たしてどちらが幸せなのだろう。

ぼんやりと雨雲を眺めつつ、拾ったナッツを口に運ぶゴリラ達。
ナッツを齧りながら彼等は思っていたかも知れない。
「人間に生まれなくて良かった」…と。
<データ>

*分類*
哺乳綱 霊長目 ショウジョウ科
*分布*
アフリカ(カメルーン、コンゴ、ウガンダ、ザイール)の森林地帯
*大きさ*
身長170〜200cm、体重75〜180kg
*食性*
植物食。主食は木の芽、葉、茎、果実など。
特に若竹や野生のセロリを好む。
*備考*
現存する霊長類では最大クラス。最もヒトに近い生き物のひとつ。
嘗てはオオショウジョウ(大猩々)とも呼称された。
一頭のオスを中心に数頭のメスとその子供からなる群れで暮らし、森林内を食べ物を探しながら移動して生活する。
威風堂々たる姿から猛獣と考えられがちだが、実際は思慮深く争いを好まない、非常に穏やかな性質の生き物。
3亜種(ニシゴリラ、ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ)に分類され、若干の形態の差異の他、住環境も少々異なる。
日本の動物園で見られるのは全てニシゴリラ。
敵に出会ったりして興奮したオスが、掌で胸の部分を激しく叩いて大きな音を出す仕草は有名(ドラミングと言う)。
又、老齢のオスは背中に美しい銀白色の毛を生じ、特に「シルヴァーバック」と呼ばれる。
乱開発と密猟が原因で非常に数が少なくなっており、絶滅が危惧されている。
怪獣映画「キング・コング」のイメージソースとしても有名。