ムツオビアルマジロ
Six-banded Armadillo (Euphractus sexcinctus)

アルマジロ類は、骨質の外装甲を有する唯一の哺乳類である。
なまなかな肉食獣の顎では噛み破る事も叶わない、極めて硬質なその外皮は、
皮肉な事に彼等の多くの個体が人間に殺される一因ともなっている。
アルマジロは肉が美味なうえ、畑を荒らす事がある為、
地域によっては過剰に捕獲されているのだ。

肉を食べた後の外皮の利用の仕方も凄まじいものばかりである。
動物好きの人間ならきっと慄然とする事だろう。
事実、私も最初はかなり度肝を抜かれた。

南米のとある地域に伝わる伝統的な弦楽器・チャランゴはその一例である。
アルマジロの硬い外皮を整形し弦と柄をつけた、マンドリンのような形の楽器である。

また、肉をはがした後、頭の皮と尻尾の皮を繋げて形を整え、
そのままバスケットとして利用する例もあると言う。

しかし、彼等アルマジロの一族の絶滅を憂慮する声を、私は未だに聞いた事が無い。
最近ではペットショップで販売されている有り様だ。
勿論、種類によってはかなり危険な状態にあるモノもいないではない。
だが、多くの種類のアルマジロが、過剰な狩猟圧にめげず個体数を維持し、
尚且つその分布を拡大しつつあるのも、また事実である。

昨今の人間達の生産活動の拡大にもめげず、変わらぬ隆盛を保ち続けるアルマジロ達。
興味深い事である。
<データ>

*分類*
哺乳綱 貧歯目 アルマジロ科
*分布*
アンデス山脈以東の南米各地の草原地帯
*大きさ*
頭胴長40cm前後、尾長20cm前後、体重4〜4.95s
*食性*
雑食性。昆虫や死肉、小動物などの動物質やキノコ、落果、穀物などの植物質を食べる。
時折トウモロコシ畑を荒らす事がある。
*備考*
皮膚が変化した骨質の外装甲が特徴的な南米特産の珍獣。
緩く皮膚で連結した6〜8本の帯状のバンドが名前の由来。
このバンドはムツオビアルマジロの機動性向上に一役買っている。
四肢が短く、重い装甲を身にまとっていると言うのに、物凄く素早く走る事が出来る。
又、前脚の爪の発達は著しく、摂食行動や外敵から逃れる為の穴掘りなどに役立つ。
尾部に臭腺を有し、それに由来する本種独特の体臭を持っている。
基本的には夜行性。日中は地下1mほどの深さに自ら掘った巣穴で休んでいる事が多い。
因みに、アルマジロとはスペイン語で「鎧武者」の意味。