オランウータン
Orang Utan (Pongo pygmaeus)
ある動物園で1頭の若いオランウータンを見た。
見られる側には悪いと思いつつも、
10分ほど時間をかけてじっくりと観察させてもらった。
観察しつづける間、彼が見せた仕草はとても多彩だった。
突然の観察者に驚き、物陰に隠れてじっとこちらを伺う仕草。
やがてこちらに敵意が無い事を見抜き、安心してその姿を表した時の仕草。
顎に手を当て、じっと考える仕草。
強くなった日差しを避ける為に、傍にあった麻袋を日傘の代わりに被る仕草。
風に吹かれて落ちてきた小枝を手にとって眺める時の仕草…。
それらは恰もひとりの哲学者のようでもあり、
目に見るもの全てを慈しむ幼子のようでもあった。
オランウータンとは、マレーの言葉で「人」を意味する“オラン”と、
「森」を意味する“フタン”の語の合成語であると言う。
その命名、さもありなんと、その時思ったものである。
<データ>
*分類*
哺乳綱 霊長目 ショウジョウ科
*分布*
インドネシア(ボルネオ島、スマトラ島)の森林地帯
*大きさ*
身長120〜165cm、体重38〜77kg
*食性*
植物食。果実や葉、時には樹皮など。特にドリアンなどの大型の果実を好む。
稀にアリなどの昆虫を食べる事もある。
*備考*
ゴリラ、チンパンジー等と共に、最もヒトに近い生き物のひとつ。
子連れのメス以外は大抵単独で行動するが、個体間の交流が全く無い訳ではなく、緩やかな社会性を保持すると思われる。
雌雄の形態差が激しく、特に老齢のオスは体躯が大きく発達し、
頬の部分が膨らんで独特の様相を為す。
樹上性で地上には殆ど降りず、枝から枝を渡り歩きながら森林内を食べ物を探し移動する。
また、木の枝を折り取って木の梢にベッドを作る様子も観察されている。
樹上生活に適応して腕の発達が著しく、また握力もかなり強い(鉛筆ほどの太さの鉄棒を掴んで曲げた記録がある)。
現地では上記にもある通り「森の人」と呼ばれ大切にされてきたが、
その一方でサーカスやペットなどの需要により過度の密猟の危機に晒されており、また住環境が劇的に破壊されている事もあって、
現在では世界規模で保護されている。