モモイロペリカン
Great Rosy Pelican (Pelecanus onocrotalus)

ペリカンと言う鳥は、その特異な姿から、
各国で様々な伝説に取り上げられている。

西洋では彼等を母性愛の象徴と見なしている。
古文書に曰く…
「ペリカンは雛を慈しみ、若し雛が死ぬような事があると、
自らの胸を嘴で引き裂き、鮮血を雛に浴びせる。
すると、血を浴びた雛の躯は再びその息吹を取り戻す。」
これは、ペリカンが雛を育てる時、
御腹いっぱい詰め込んだ魚を口移しで雛に与える様子から考え出されたらしい。
実際ペリカンの子煩悩ぶりは非常に定評がある。

一方、中国では彼等を洪水や、それに伴う土木工事の前兆と見なした。
古文書に曰く…
「その鳥はオシドリに似ているがずっと大きく、人間のような足を持っている。
この鳥が現れると川の氾濫が多くなり、またそれに伴った土木工事が多く施行され
多くの人々に塗炭の苦しみを与える事になる。」

人間のような足、と言うのは、
全ての指に水掻きがついて前方を向き、あたかも人の足の踵のような形状をなす為だろう。
川の氾濫云々、と言うのは、彼等は水辺に住んで魚を常食としている為、
雨で溢れた川辺に狩りに集まったのをそう見なしたものと思われる。

古代の人のイマジネーションも実に多岐にわたる物…と、
ペリカンを見る度思う。
<データ>

*分類*
鳥綱 全蹼目 ペリカン科
*分布*
南ヨーロッパからアフリカ、アジア中央部の河川、湖沼
*大きさ*
全長1.4〜1.75m、翼開長2.7〜3.6m、体重10kg前後
*食性*
魚食性。30cm以下の魚なら淡水性、海水性を問わず何でも食べる。
稀にカニやエビ等の甲殻類も摂食。1日の摂食量は1羽につき1kg以上。
*備考*
非常に大型の水鳥で、飛翔能力を持つ鳥の中でもかなり大型の部類に入る。
体に比例して翼も大きく、長時間の飛行が可能。
やや桃色がかった白い羽毛と、長い嘴、伸縮性に富んだ喉袋が特徴。
雌雄同色だが、嘴がやや弓なりに曲がってるのがオス、まっすぐなのがメス。
群集性が強く、常に大群で暮らす。
餌を得る時に取る方法は非常に独特で、
まず十数羽からなる群れを形成し、U字型の編隊を組んで
共同で魚を浅瀬に追い込み、浅瀬で輪になって魚群を囲んで逃げられないようにしてから、
喉袋をタモ網のように用いて魚群を一網打尽にする。
年一回繁殖し、産卵数は普通一回のお産につき一個。
雛は親が半ば消化した魚肉を口移しで(と、言うよりは親の嘴に頭を突っ込んで)摂取する。