ナミハリネズミ
Europian Hedgehog (Erinaceus europaeus)

少し以前、伊豆稲取・伊豆バイオパークにて、
生きたハリネズミと触れ合う機会があった。

成る程、「針鼠」とは良く言ったもので、
木綿針みたいな剛毛に背中一面を覆われている。まさしく鉄壁の防御。
驚かされるとボール状に丸くなり、脆弱な腹部をがっちりガード、少しも抜かりが無い。

こうした防御力の強さがモノを言うのかどうか知らないが、
最近、伊豆高原周辺でちょっと困った事が起きている、と飼育係さん。

何でも、ペットとして飼われたハリネズミが野生化していると言うのだ。

残飯から木の実、屍肉まで何でも食べ、繁殖力も旺盛、寒さにも強い。
野生化したハリネズミは既に野外で繁殖しているとの未確認情報もあるようだ。
飼育係さん自身も、車に轢かれたハリネズミを幾度も見かけたと言うし、
イヌの餌を狙って人家に出没する図々しい奴までいるとの話だ。

外国産の珍しい動物を飼育する事は、
時としてこのような事態を招く事もある。
今後、野生化したハリネズミが伊豆高原周辺の生態系にどのような影響を与えるか。
予測はつかないが、土着の生態系が大いに撹乱されるのは間違いないだろう。

玩物喪志は、あらゆる意味で自然の大敵である。
犬馬はその土性に非ずれば養わず。
この言葉を我々は決して忘れてはならない。
<データ>

*分類*
哺乳綱 食虫目 ハリネズミ科
*分布*
ユーラシア(ヨーロッパ、アジア北部、ロシア)の森林地帯
*大きさ*
頭胴長20〜32cm、尾長2.3〜2.7cm、体重400〜1100g
*食性*
雑食。木の実や果実、木の芽から屍肉、昆虫、カエル等の小動物までメニューは多彩。
イヌの餌に惹かれて人家に侵入する事もある。
*備考*
ネズミと名が付くが、系統的には寧ろモグラに近い仲間である。
名前の由来ともなった針状の剛毛、発達した髭、つぶらな丸い眼が特徴。
下栄えの多い地上に単独か家族群で住み、概ね夜行性。
足が短く丸々とした体型だが、走ると素早く、木登りや泳ぎも達者である。
極めて臆病な性質の持ち主で、驚かされると頭を腹部にたくし込んで丸くなり、
針状の剛毛を逆立てて身を守る。
また、壁の塗料や毒ガエルの体液などを嘗めて針毛に擦り付ける習性があるが、
この行為が何の為のものなのかは不明。
寒さに強く何でも食べる為、ペットとして人気が高いが、
逃げ出した個体が簡単に野生化する為、個人での飼育は厳しく制限されている。