フサオマキザル
Brown Capuchin (Cebus apella)

硬い木の実を割る為に、竹の節や枯れ木の股にぶつける。
竹の中の雨水溜まりにカエルを見つければ、竹の皮を巧妙に裂いてカエルを捕らえて食べる。
潅木の枝に守られた樹上性の鳥の巣も、多くの棘さえ物ともせず叩き落し、卵を盗む。

吊り下げたバナナやパパイヤを取る時に棒を使うなどお手の物。
教え込んだ際に憶える事柄の数足るや、他のサルなど目でも無い。

誰が呼んだか、付いた渾名が「南米の類人猿」。

オマキザルとはそう言う生き物である。

近年、このサルの賢さを利用してある試みが行われている。
身体の不自由な人間の介護の手伝いを、何とこのサルにやって貰おうと言うのだ。

何しろ賢いサルなので、人間の子供が出来そうな事なら大概は憶え、
しかも自ら状況を思考してそれを行う事が出来る。
寝ている飼い主を起こす、郵便物や新聞を取ってくる、
プレーヤーにCDを入れてスイッチを押す、食事の際に食器を並べる手伝いをする…
その行動は、人間と同じように「手」を使える事により、
それまで主流だった「介護犬」とは比較にならぬ程の広がりを見せている。

実用化の噂は聞かぬが、実現に至った時は
介護の世界に大きな影響を与える事は間違いないだろう。
その内、盲導犬や聴導犬と同じ位のレヴェルで
「介護猿」がポピュラーになるかも知れぬ。
<データ>

*分類*
哺乳綱 霊長目 オマキザル科
*分布*
南アメリカ北東部の森林地帯
*大きさ*
頭胴長33〜42cm、尾長41〜49p、体重3〜4.5kg
*食性*
雑食。木の実、果実、芽などの植物質から小動物、昆虫などの動物質まで何でも食べる。
*備考*
南米に数多く住む「オマキザル」類のひとつ。南米で最も反映している霊長類とも言われる。
部位に拠って濃淡の差が激しい褐色の被毛を持ち、頭に人間の毛髪を思わせるはっきりとした濃い染め分けがある。
この為嘗ては「カツラザル」(鬘猿)とも呼ばれた。
体長より長い尾には「纏じょう性」即ちモノに強く巻きつく能力があり、
樹上での活動の際、まるで3本目の「手」のように自在に使いこなす。
極めて協調性の高い家族単位の小さな群れで行動する。
食物を漁る際、狩りの簡単な道具としてしばしば木の棒や石を用いる事で有名。
道具を使いこなし、また群れの協調性を高める為に非常に高い知能を持ち、一名「南米の類人猿」とも呼ばれる。
飼育下でも様々な興味深い行動を見せ、動物園でも人気の高い生き物のひとつ。