*悪臭を有する古雑巾のなれの果て*
「白溶裔(しろうねり)」の「溶裔」とは、布が風にたなびく様を表した語だと言う。
一般には、この「白溶裔」は雑巾や布巾、蚊帳などの布製品の使い古しが変化した化け物と伝えられている。
雑巾の使い古しが化けた為なのか、この妖怪は全身から耐え難い悪臭を放ち、ぬらぬらとした粘液に体を包まれていると描写されている。
こんな話がある。
ある旅人が廃墟と化した村に宿をとり、とある廃屋の中に入ると、突然強烈な悪臭を持った得体の知れない者が顔面にまとわりつき、男の顔に悪臭の息を吹き付けた。男はあまりの臭さに、そのまま気を失って倒れてしまった。
この時の得体の知れない化け物こそ「白溶裔」だった、と言う話である…最も近年一部の妖怪研究家は、この話は後世創作のものであると断じている。
妖怪画の大家・鳥山石燕(とりやま せきえん)翁が描くところの「白溶裔」は、ひょろ長い胴体と獣に似た頭、3本の指が生えた四肢(3本指は妖怪の特徴であると伝えられる)を持った、ぼろ布で出来た竜のような姿をしている。