モギィ(フクロジャッカル)
学名:リコディデルフス・エラフロペス
Moggy(Lycodiderphus elaphlopes)
分類*哺乳綱 有袋目 フクロジャッカル科
棲息時代*近未来(今から500万〜700万年後)
大きさ*全長1.1m(オオカミ大)
分布域*南アメリカの草原地帯
有袋類の一種であるオポッサムから進化した肉食性有袋類。
体型はイヌ類に似ており、速く走る事に適応したすらりとした長い脚を持つ。
また、先祖では樹に巻きつけ移動の補助に用いられた長い尾は纏じゅう性を失い、
今では疾走する時のバランサーとして機能する。
身体も大きいが、四肢と尾以外の器官は先祖であるオポッサムの名残を留めている。
肉食性で、地上に棲む多くの小動物(齧歯類やヘビ、アルマジロなど)を獲物として狩る。
育児嚢は健在で、産み落とされた子供(一産3〜4子)は
ある程度の大きさに育つまで袋の中に留まり、
外へ出る頃には眼も開き、自分で歩けるようになる。
学名は「軽快な脚を持った二つの子宮のオオカミ」の意味。
*1頭の植物食動物が何かから逃げるように疾走している。不用意に群れから離れすぎた為に、草原でも1、2を争う恐るべき捕食者、モギィの群れに目をつけられたのだ。息せき切って疾走する植物食動物。その背後から、イヌに似たシルエットを持つ数頭のモギィが追って来る。その長い尻尾はヘビのように不気味にくねっている。先頭を走る1頭が、植物食動物の臀部に噛み付こうと身構え、襲い掛かる。然し、すんでの所処で植物食動物は身をかわし、その後脚で思い切りモギィの顔面を蹴りつけた。悲鳴をあげてひっくり返るモギィ。仲間のモギィが一瞬だけ怯み、逃げる獲物に隙を与えた。植物食動物はどうにか逃げおおせる事に成功する。蹴り飛ばされたモギィは暫くのたうっていたが、やがて起き上がり、仲間と共に悔しそうに大声をあげて吼えながら、元来た道を次の獲物を求めて走り去った。獲物はきっと何処か他の場所にも存在するだろう。
*嘗て南アメリカには、ボルヒアエナ類(Borhyaena)と呼ばれる大型の肉食性有袋類のグループが存在していた。真獣類(有袋類とカモノハシ類を除く全ての現代型哺乳類をこう呼ぶ)の肉食動物が存在しなかった南アメリカで彼等は大繁栄を遂げ、イタチやカワウソに似た種類やクマに似た種類、オオカミやハイエナに似た種類、更にはサーベルキャット(剣歯虎猫類)に似た種類など様々に分化した。こうした、全く類縁の遠い動物群の間での外見的類似は進化の歴史上数度に渡り繰り返された現象で、「収斂進化」と呼ばれる。
だが彼等は、後に進化した大型の地上性猛禽類や、北アメリカから陸橋を渡って到来した真獣類の肉食動物との競合に破れ、結果、絶滅してしまった。
そして彼等の絶滅から数千万年を経た今、同じ大陸で同様の進化が起きているのは非常に興味深い事である。
モギィは有袋肉食動物の中では大型の種類で、その生活は嘗て地上を席巻していた地上性の大型肉食獣…オオカミやジャッカルなどのイヌ科動物そのものである。彼等は緩やかな社会性を保持し、群れの力を頼みに様々な生き物を狩る。目下、彼等の最大の競争相手は、種々雑多な鳥類から進化した大型の地上性猛禽類であるが、これも嘗ての進化の歴史をなぞるような現象で興味深い。
***この動物をより知る為のキーワード***
収斂進化(しゅうれんしんか)
全く類縁の無い動物群がそれぞれの生息環境で、同様の生態的地位に進化した結果、似たような外見や身体的特徴を保持する事。モギィと真獣類のオオカミの外見的類似はその好例である。
ボルヒアエナ類(Borhyaena)
坊狼類(ぼうろうるい)とも呼ぶ。嘗て南米に棲息していた、絶滅した大型肉食有袋類の一派。真獣類の侵入以前は、大型の地上性猛禽と共に南米では最強の捕食者だった。名前は「肉」を意味するラテン語と「ハイエナ」の合成語である。