クールマ(ウミアルマジロ)
学名:テスツドテリウム・マリティナム
Kurlma(Testudotherium maritinum)
分類*哺乳綱 貧歯目 ウミアルマジロ科
棲息時代*近未来(今から500万〜700万年後)
大きさ*全長1.2m(イノシシよりやや小)
分布域*南北アメリカの海岸
アルマジロから進化した海の雑食動物。
鰭状に進化した四肢と、海中での活動に適した軽い構造の甲羅を持つ。
また、頭部の甲殻の一部が上顎の前部にせり出し、先端が切歯の如く磨り減っているのが特徴。
この顎板と下顎の角質化した歯茎を摺り合わせ、海藻(主にコンブなどの褐藻類)を食べる。
稀に貝類や魚の屍骸なども摂食する。
陸上での動きは非常にぎこちないが、海中での動きは優雅なほどに素早い。
海中では前脚を僅かに上下に羽ばたかせ、
後脚で舵を取りながら滑るように泳ぐ。
一生涯の殆どを海中で過ごし、陸に上がる事はまずない。
子供(一産3〜4子)を産む時は外敵のいない離れ小島の入り江に潜伏し、
出産後ひと月もの間飲まず食わずで子供の面倒を見る。
為に、身篭ったメスは異常なほど食欲が増し、体重も倍近くに増える。
学名の意味は「海棲のカメに似た獣」である。
*海藻が繁茂する浅瀬に、小山のような物体が幾つも浮かんでいる。よく見るとその“小山”は無数のモザイク状の小骨片で形成されている。時折、その物体の一方から噴気音があがり、これも小骨片で覆われた奇妙な獣の頭が浮かび上がる。その口には、毟りたての海藻がぶら下がっている。顎を左右に動かしながら、毟った海藻をモグモグと口の中に送り込むと、その動物は再び頭を海中に沈めた。彼等はクールマと言い、嘗て地上に棲んでいたアルマジロの一種である。然し、今では陸上生物だった頃の名残は殆ど無い。四肢は鰭脚となり、筋肉や骨格の構造が変化して、海中を羽ばたくように泳ぐ事が出来るようになった。その姿は、今では絶滅してしまったウミガメに非常によく似ている。
*陸上で劇的な環境の変化が進行している間、海にも同様の激変が訪れていた。海水面が下降し、沿岸部に棲息していた殆どの動物を駆逐してしまったのである。ウミガメもまた、海水面の減少で絶滅した海洋性動物のひとつである。
もともと人類時代から、肉や脂肪、卵、甲羅を狙われて過度の狩猟圧に晒され続け、斜陽の呈を示していたウミガメ類は、この時代にはほんの2〜3種類が細々と生きているのみだった。沿岸で採食し、入江等の汽水域で繁殖行動を行っていた彼等は環境の激変に耐え切れず、更にクジラ類の絶滅により台頭してきた肉食性軟骨魚類の格好の餌食となってしまったのである。
ウミガメが絶滅した後、食資源として誰からも見向きもされない褐藻類(コンブ、ワカメなど)に目をつけた動物がいた。南米に住んでいたアルマジロの一種である。彼等は元々何でも食べるゼネラリストとしての側面を持ち、更に強固な甲殻を持っていたにも関わらず泳ぎが得意であった。海藻や海中の小動物を狙って海に入るようになった彼等は次第に大きな身体と水中生活に適した様々な特徴を持つようになり、遂には嘗てウミガメが占めていた生態的地位を我が物にする事に成功した。これがクールマである。
クールマの生活は、一部はカバ等の親水性の植物食動物にも似ているが、強固な甲殻で身を守り、植物だけではなく貝や死魚等も食べる所処はウミガメにそっくりである。彼等が陸に戻る事は滅多に無い。身動きが取れなくなるばかりか、骨格が非常に単純な構造になっている(海中での行動に適応した結果である)為、上陸すると自分の体重で内臓を圧迫しかねないからである。子供を出産する時は大陸沿岸から離れた小島の入り江に入り、淡水の中で子供を出産し、授乳も水中で行う。
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