エリマキキツネザル
Ruffed Lemur (Varecia variegata)
ホーゥ、ホゥ、ホゥ、ホゥ…
哀愁を帯びた叫びが動物園内に木霊する。
声の主はネコほどの大きさの霊長類。
その名をエリマキキツネザルと言う。
アフリカ大陸の傍らに横たわる島大陸・マダガスカルの産だ。
白と黒のメリハリの有る毛皮、ふさふさの尻尾、
そしてクリクリとした金つぼ眼。
賛否は分かれるが、女性には非常に人気が有るように思う。
ややイヌに似た可愛らしい面持ちも女性の支持を受ける理由かも知れない。
現在マダガスカルは激しい開発の波に揉まれている。
人間の情け容赦ない生産活動が、かの島に特産する多くの動物を追い詰めている。
エリマキキツネザルとて例外ではない。
故郷に押し寄せる時代の荒波を知ってか知らずか、
今日もエリマキキツネザルは悲しげな叫びをあげる。
ホーゥ、ホゥ、ホゥ、ホゥ…
<データ>
*分類*
哺乳綱 霊長目 キツネザル科
*分布*
マダガスカル島東部の森林地帯
*大きさ*
頭胴長54〜56cm、尾長58〜65cm、体重3.3〜4.5kg
*食性*
植物食。果実が食餌の大多数を占める。他に花蜜、種子、若葉など。
*備考*
キツネザル類はマダガスカル島で独自の進化を遂げた古代霊長類の生き残りである。
エリマキキツネザルはその中でも割と大型の部類。
図に示した白黒型の他に、赤褐色、黒一色、あるいはその混交など、
亜種によって様々な毛色を有する。
ただし、どの亜種も耳から頬、喉にかけてエリマキ状の長毛を有するのが特徴。
家族単位の小さな群れで暮らし、おおむね樹上性だが時に地上にも降りる。
通常のキツネザル類は採食事も子供を連れて歩く習性があるが、
この種だけは、採食事に子供を巣に残して出歩く。