*古代神の血を引く妖怪*
読んで字の如く、大きなひとつ目を持った妖怪。地方によって幾つかの呼び名があり、「目ひとつ五郎」(めひとつごろう…宮崎)「目ひとつ坊」(めひとつぼう…静岡)とも呼称される。
北海道や沖縄を除くほぼ日本全域に伝承があり、その性格も様々だが、一般に悪戯好きで人を化かしたり驚かせる事を好む。また、然るべき物忌みの日に人里を訪れて民草の行動を観察し、その行いによって禍福(最も福より禍の方が多いのだが)を齎すと言う、疫病神的な役割を担っているとする伝承も数多い。京都府・比叡山では、戒律を守らず里遊びに耽る堕落僧の前に巨大な「単眼小僧」(ひとつめこぞう)が出没し、鉦を叩いて脅したと言う伝承が存在する。この「単眼小僧」は嘗て比叡山で多くの僧を教え導いた高僧の怨霊が化身したものと言われ、生前の呼び名から「慈忍和尚」(じにんおしょう)と呼ばれている。
妖怪としてはかなりの有名どころの為か、昔から研究も盛んであり、特に民俗学者・柳田國男(やなぎだくにお)博士の「隻眼の者だけが神の叡智を目にし得る」と言う民間伝承に端を発する「古代神、若しくはその眷属の零落した存在」の説は広く知られているところである。
江戸時代の随筆家・上田秋成(うえだあきなり)の「春雨物語」に登場する、滋賀県の山中に祭られる異形の神・天一目神(あまのまひとつのかみ)などはこうした神の代表例であろうか。