コアラ
Koala (Phascolarctos cinereus)
アメリカのサンディエゴ動物園は、
オーストラリア以外の国で初めてコアラの飼育に成功した事で有名である。
当時、コアラは毛皮目的の過剰な狩猟圧に晒された影響で個体数が激減し、
オーストラリア政府が厳しい輸出制限を若いていたが、
コアラがオーストラリア以外の動物園で飼育されないのは、
別な理由があった。
即ち、餌となるユーカリの樹の確保である。
コアラは特定のユーカリの葉しか食べない。
そして、ユーカリに代わる代用食はこれまで開発されていない。
従って、コアラを飼育せんとすれば、
先ず安定して餌のユーカリを確保出来る環境を作らなければならないのである。
この難題に真っ向から立ち向かったのがサンディエゴ動物園だった。
コアラの飼育を企画した当時、かの動物園の園長は女性だったが、
この女性園長が、実に大胆な方法を取ったのである。
それは、園内にある樹を悉くユーカリの樹に植え替え、
あまつさえコアラ専用のユーカリの森を動物園近郊に作ると言うものだった。
この計画は巧く行き、
初めてオーストラリア以外の国でコアラの飼育が成功したのである。
サンディエゴの成功から長い年月が経つ。
今現在、この時のサンディエゴの例に倣って、
多くの国がコアラの飼育に成功している。
勿論、この日本でも…。
<データ>
*分類*
哺乳綱 有袋目 コアラ科
*分布*
オーストラリア南東部の森林地帯
*大きさ*
頭胴長65〜80cm、尾は痕跡程度、体重4〜15s。オスの方がやや大きい。
*食性*
植物食。特定のユーカリの樹(600種中35種)の枝葉しか食べないと言う、哺乳類きっての偏食家。
季節によって食べるユーカリの種類が異なり、また個体ごとの嗜好もあるようだ。
*備考*
オーストラリアを代表する動物のひとつで、またの名を「コモリグマ」とも言う。
灰色がかった羊毛状の毛皮と、大きな耳、樹上生活に適応した独特な形状の四肢が特徴。
また、体長と比較して長い盲腸を持つのも特徴(最大で2.4m、平均して体長の3倍)。
普段は樹上でゆっくりと移動しながら生活するが、地上での動きはなかなか活発。
縄張り意識が強く、特に繁殖期のオスはその傾向が一段と強くなる。
オスが侵入者に対して行うテリトリーコール(縄張り宣言の吼え声)は姿に似つかわしくない獰猛な声である。
強い毒を持つユーカリを食資源に選んだ事で、他種との競争を回避し、今日まで生き延びた珍しい動物。
食べたユーカリは長い盲腸でバクテリアの力を借りてゆっくりと分解し、発達した肝臓で解毒する。
乳離れした子供にユーカリを分解するバクテリアを摂取させる為、
離乳食として母親が「バップ」と言う未消化のユーカリを排泄して子供に食べさせる習性がある。
一時期、毛皮を目当てに過剰に狩り立てられ、著しく数が減ったが、
その後の保護策が功を奏し、少しづつ個体数は回復している。