素直になれない




はあー…。
これでため息つくの、何回目かしら。
毎年の事だけど、どうもタイミングがつかめないのよね。
2人っきりの時に渡すのは、気恥ずかしくてイヤ。
でも、皆の前で渡すのは もっとイヤ。
かといって、渡せずじまいになるのは もっともっともーっとイヤ。
はあー…どうしたらいいのよ…。

自室の窓から海を眺めながら、さっきからずっと同じ事ばっかり考えてる。
太陽の光を受けてキラキラ光る 穏やかな海に対して、私の頭の中は大シケ。
ダメだわ、全然 考えがまとまらない。

手の中の包みに目を落とすと、またため息が出た。
「…どう言ってアルスに渡そう…コレ…。」



―――コンコン。

誰かが扉をノックした。
「…どーぞ。」
半ば投げやりに答えると、ガチャリという音と共に 聞きなれた声。

「マリベル…?何か元気なさそうだけど…どうかした?」
「?!!」

たった今 考えてた相手が現れたのもそうだけど、私はむしろ、その格好に驚いた。

「べ…別に…どうもしないわよ…それより、あんたこそ その格好どうしたのよ?!」
「ああコレ?ガボとアイラがくれたんだ。前に着てたヤツは、戦闘でボロボロになっちゃったしね。アイラが言うには、『似合ってたからコレにしよう』って、ガボが譲らなかったらしいんだけど…似合う…?」

アルスは、いつもの緑の服でなく、海賊の服を着て立っている。しかも、キャプテンハットのおまけ付き。旅の途中、ハーメリアでも思ったけど……正直、似合ってる。
これで、水竜の剣でも持てば カンペキじゃない…?

「あんた、十分シャーク・アイの後継げるわ…。」
「ぅええ?!それは遠慮したいなあ…。」
「バカね、冗談に決まってるでしょ。」
「あれ?マリベル、何持ってんの?」

私のすぐとなりに来たアルスにそう言われて、やっと思い出した。
しまった、手に持ったままだった事忘れてた!!

「え、あ、そうそう!あんたにコレ渡そうと思って、アミットせんべい!わざわざあんたの為に、このマリベル様が焼いてあげたんだからね、感謝しなさいよ!」
「あ…そうなんだ…マリベル、ありがとう。」

うわ、変な声出ちゃった…。
何で私ってこう、ひねくれた事しか言えないのかしら。どうやったら素直になれるわけ?
でも、とりあえず……渡せてよかった。

「マリベルってさー…。」
「何?」
早速せんべいにかじり付きながら、アルスが言う。
「前にコレ焼く時に、黒コゲにしたよね。」
「なっ…ちょっと、何年前の話よそれ?!」
「えー?3年くらい?」
「いきなり変な事言わないでよね!いくらなんでも、もうちゃんと焼けるわよ!失礼ねー…。」
「ゴメンゴメン、何かフッと思い出したからさー。マリベルが焼いたのっておいしいから、僕 好きだよ。」
「…あ、そう…ありがと。」

やっぱりアルスはズルイ。
そんなうれしそうな顔で言われたら…―――――何も言えないじゃない…。
だけど、これだけは。
これだけは伝えときたい。

「…ねえ、アルス。」
「ん?」
「……誕生日おめでとう。」

アルスは一瞬キョトンとした後、また笑顔に戻った。
「…うん、ありがとう。」



私に“素直になれ”なんて、やっぱりムリだわ。
私には、これが精一杯。

アルスに想いを告げれるのは、たぶん、当分先。





こちらのイラストとペアになっています。合わせてご覧下さいv

【作者様より】
イメージとしては旅の後の、友達以上恋人未満な2人です。アミットせんべいは、きっとアルスの好物ではないかと…(笑)
マリベルの、意地っ張りな性格故の悩みや、複雑な乙女心が少しでも伝われば幸いです。

【管理人コメント】
アルスの為にせんべい焼くマリベルを想像すると微笑ましいです(笑)アルスの優しさと、ほんのちょっと勇気を出して見せたマリベルの素直な一面がとても可愛いですねv
早く想いが告げられる日が来ると良いですね…!(笑)ありがとう御座いました!


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