ハゲジオン 髪が残ってた 手を伸ばしたら 消えてった クスリのビンをぶらさげて立ちつくした昼下がり ハゲてなかったなぁ 黒くて背の高い髪 視界のはずれで 忘れられたように 生えてた 色褪せて 霞んでいく 記憶の中 ただひとつ 思い出せる 忘れられたままの髪 いつだったけなぁ 髪を濡らした あの日も 滲んだ景色の中で 滲まずに揺れてた いつだったけなぁ 自分に嘘をついた日も 正しいリズムで 風と歌うように揺れてた いつの日もふと気づけば僕のすぐそばで どんな時も 黒いまま 揺れてた 誰のタメ? 何のタメ? 生きている意味を無くしたとき 自分の価値を忘れたとき ほら 見える 揺れる黒い髪 ただひとつ思い出せる 抜けることなく揺れる 髪を創ってた 再度(もいちど) 触れてみたかった 子供の頃は 鼻で笑い飛ばす ハゲオヤジ ところが僕らは 気付かずに 繰り返してる オヤジになっても髪を創っては手を伸ばす 幾つもの育毛剤 かけてみた 人に問う 君が今 試してるモノは何?その色は?その店は? 髪ならどこかにおとしてきた 希望と遙かな距離を置いた ほら 今も揺れる黒い髪 僕は気付かなかった 色も店も知っていた 髪をいじってた いつしか髪は抜けていた 視界にあるのは 数え切れない 抜け毛だけ 大事な何かが 音も立てずに 抜けてた クスリのビンが涙で満ちてった────・・・ まだ 髪を創ってる すがる様に繰り返してる 生えてこないって ことも 知りながら手を伸ばす ハゲてなかったなぁ 黒くて背の高い髪 抜けて解ったよ あれは僕のため生えてた 気付くのが遅くてうなだれた 僕の目が 捕らえたのは水鏡の中の 小さな毛 新しい毛 生きていく意味とまた出会えた 自分の髪が今生まれた 抜いても抜けない毛が生える 僕の中に深く根を張る ほら ここに揺れる黒い髪 僕は気付かなかったまだハゲに変わりはない 僕の頭で揺れるなら 抜けることなく揺れる 揺るぎない執念だろう