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GPSを使っていますか

山でGPSを使うことはかなりあたりまえのようになってきました。自分のトレースした
ラインをGPSのデータで公開するようなこともできます。

私はGPSを持っていません。欲しいとも思いません。
理由は、「面白くないから」です。
この感覚を他人に勧めるつもりはありません。ただ、私の中の「山スキー」というゲーム
の中ではルートを探す、というファクターが結構なウェイトを占めているからなんです。


地図やコンパスは使います。「同じじゃないの?」と問われれば理屈では反論できません。

私たちは、素っ裸で山を歩けない以上、何らかの装備、衣類、情報で武装して出かけます。

でもどこまでを「登山、山スキー」と考えるかのボーダーラインをそれぞれ持っているので
はないでしょうか。
文明の恩恵に最大限に浴する「ヘリコプターで山頂に到達するような行為」と、
まったくそれを否定する「素っ裸かつ事前情報なし、で山を歩く」
その両極端の間のどこかにボーダーラインを持っています。

私にとっては、GPSの積極使用は、そのボーダーラインを越える、ということです。
アバランチビーコンは積極的に携行するようにしています。ハイテク機器は有効だと感じ

てもいます。
でもアバランチビーコンとGPSは、クライミングにおける、「レスキュー用のボルト」

と「前進用のボルト使用」と同じ位違います。事故が起きたときボルトを打つのと、ボル
トを打ってルートを拓くのとは全く意味が違います。

クライミングの世界では、どこまで人工的な手段をつかったらフェアでないか、という議

論はずっと以前から行われてきました。門外漢にはどうでも良いことですが、なぜボルト
を掴んで登ったらフリーでなく、手にチョークをつけて高性能なゴムを使ったシューズ
を履くのはフリーなのか、という議論を何年間も繰り返してきました。
結局これは理屈では説明できなく、
「私はそう感じるんだ、そこまでだったら面白いから」ということで落ち着いています。
クライマー達は用具を使いすぎると「面白くなくなる」ということ、クライミングや山ス
キーは「敢えて○○を使わない」ということで成り立っているゲームだということを本能
的に知っていたのです。

GPSを使おうが、ヘリコプターを使おうが、スノーモービルを使おうが、山で滑れば山

スキーかもしれません。
また、一緒に行く人がGPSを持っていても別に気にはなりません。それはそれで、能率

的なトレースが可能になるでしょう。
でも頼りすぎたときには楽しみがそれだけスポイルされていくことには、スキーヤーもク

ライマー並に敏感であっても良いような気がします。ボーダーラインがそれぞれ違うのは
当然です。豪快に滑れればそれでいい、という人もいるでしょう。
でもその限界がどこか考えずに、機能的だから、便利だから、持っていれば安全だから、
(山スキーヤーはこの言葉に弱い)と武装していくのは美しくないと思いませんか?

ある人が、森の中のボルダーで一人、プロブレムに取り組んでいます。難しいらしくなかなか
のぼれません。別の友人がきて得意げにいいました。
「この梯子を使えば簡単にのぼれるのに・・。知らないのかい?」
ボルダラーはこういうでしょう。「ほっといてくれよ・・」
それと似たようなことになっていませんか。


2003年6月