2−18.「その先」のこと

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 私にとって「恋愛関係」とはほとんどが闇の中に包まれた世界である。かろうじてわかるのは入り口の思いを告げる段階と、一つのところに寝る段階だけである。それも後者の方はあまりまっとうな情報源ではないから、かなり特殊な知識が蓄えられてしまっているんじゃないか、と思う。
 いずれにせよ、これは恋愛における入り口と一時点であって、問題はこの間に何が起きているか、である。そしてそれこそが本当の「恋愛」ということになるだろう。
 私は今まで、恋人同士ということで他人と関係を深めた試しがない。もちろん男とそういう関係になるつもりは一切ないが、女性ともなると親しく話が出来る段階が精一杯である。好きな人を目の前にすると、萎縮するかわざと粗暴に振る舞うか、という性格をしているので、告白をしてみた経験もほとんどなく、もちろんどれも失敗している。
 そんなわけで、告白が成功したとき一体何が起こるのかは全く知らない。知らないことは恐れにつながる。なんかとんでもなく面倒なことになったりしたら嫌だなぁ、という気持ちが起こるのだ。
 くだんの女性の話では、告白の後には、簡単に言っていくつかの段階があり、お互いの意志を確認してつきあい始め、そのうち手をつなぐようになり、キスの一つもするようになり、いずれは一つ所に寝るようになる。ここまで、綿密なつきあいを続けてだいたい3ヶ月だというが、個体差や標本差が激しいから、この数字は何とも言えない。
 しかしこれでもまだ、ブラックボックスの一時点を表しているだけで、つきあい始めてから手をつなぐまでの間、手をつないでからキスをするまでの間、キスをしてから一つ所に寝るまでの間に何があるのか、そこがわからない。しかしこの肝心の部分は、お互いに好きでなければわからないわけで、「教えて下さい」というわけにもいかないのだ。
 本当に好きな人となら、一緒にいられることの喜びだったり、人とつき合うことの楽しさだったり、いろんなことがあるんだろうが、途中で別れる男女のことを考えると、必ずしも面白いことばかりではあるまい。ガマンならないことを言われたり、逆鱗に触れるようなことをして相手を傷つけたり、あげくにケンカして気まずい関係になったり、人間関係にある良い面悪い面両方を持ち合わせているだろう。これに恋愛が絡むと厄介なことになりそうである。

 マイナス面に目をつぶり、好きな人と一緒にいる楽しさだけを考えるとする。で、意中の人に思いを告げたとして――私の行動に、意識に、変化はあるんだろうか?
 私は相手が男だろうと女性だろうと、ほとんど態度は変わらない。もちろん女性に話しちゃマズいことがあったり、男との会話にそぐわないネタというのはあるが、女の子相手だと急に優しくなるとかそういうことはない。相手が誰か、10年以上のつきあいがある「ブッコ学会」の連中なのか、ゼミの連中か、それとももっと別の所の知り合いか、というところで態度が変わることはあるが、これは誰もがやっていることだろう。
 特に女性に対しては、私は2つのつきあいかたしか出来ない。敵視するか、それとも友好的に接するか。サークルの女子学生には敵視の態度を取った――表面的にはサークル運営の都合上仲良くしていたが、敵と見なしていたことに間違いはなく、たびたび衝突を起こした。
 一方で、敵でない人たちに対しては友好的に接する。これは初めて会った人であろうとつきあいの長い人であろうと変化がない。敬語口調が無くなるかどうかぐらいである。それこそ1年経とうが2年経とうが、同じように接し続ける。それ以外に接し方を知らないのである。私が相手を好きであろうとそうでなかろうと変わりはない。
 つまり、私の場合、告白するかされるかして恋人同士になったところで、つきあい方に変化がない。私からしょっちゅう電話をかけるようなことも、デートのお誘いをかけるわけでもない。誘われればでかけていくし、話せばにこやかに笑っているが、これは思いを告げる前と後と全く同じなのである。自分から手をつないだりキスをしたり、といったことももちろんしない。なぜならそのタイミングも、そういう雰囲気に至る道筋もわからないから、何もできないのである。

 従って、女性のリードがあって、つきあい方というものを教えてくれない限り、私は今までと全く同じつきあい方をひたすら続けて行くだけ、なのである。何年つき合っても全く同じ接し方しかしない男を、女性はどう見るだろう?それも恋人の女友達との接し方とほとんど同じなのである。本当に好きなのか、と疑われても無理はない。
 だからといって接し方を変えても、失敗するのがオチである。やり方を知らないから、どこかから教わらない限り、試行錯誤はさけられない。普段と変わったことをやるわけだから、ロクな結果が出ないだろう。

 つきあってから先のこと――本当の「恋愛関係」を知るためには、おそらく恋愛小説の分析が一番なのだろうと思う。しかしこれが全く理解できないのである。女性の心情はもちろん、男の行動や意識すらほとんど理解できない。わかるのはケンカの場面ぐらいのもので、「そういうドロドロした状況になるんじゃないですか」と嫌になってくる。
 やはり身をもって体験しないと、鈍い私には理解できないらしい……。

(00/11/15)
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