国内ブッコ:その丘の向こう
……編集室ファイル#7

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1.ブルートレイン

9月11日 午後7時29分 大宮駅→北斗星3号札幌行き→札幌

 蒸し暑い夜だった。夏らしくなかった夏を、ムリに今日に持ってきたみたいな暑さ。
 今年の夏は寒かったから、途中からスーツに変えたんだけど、今日ぐらいはカジュアルにすりゃ良かった、と改めて後悔する。
 北斗星3号は、数少なくなったJRの寝台列車。いわゆるブルートレイン。上野を出発点として、16時間かけて札幌へ向かう。
 在来線が出て行ってしばらくして、真っ赤な機関車に引っ張られてきた青い車体を見て、ホントにブルートレインだ、とちょっと感激したり――こういう旅情たっぷりの乗り物って最近ないでしょ。それに鉄道好きの少年時代を過ごした僕にとって、ブルートレインってまた格別な乗り物だったりする。

 今回取れたのは、B寝台の下段、しかも喫煙車。本当は個室、せめて禁煙車の寝台を取りたかったんだけど、キップを取った時期が遅すぎてだめだった。
 駅も終日禁煙、歩きタバコは目くじらを立てられ、喫煙場所に追いやられてるスモーカーたちは、「喫煙車」とみるとかたきを取るぐらいの勢いで吸いまくる。新幹線の喫煙車とか、10年前ぐらいの感覚で乗るとえらいことになる。みんなして室内が煙るほど吸うなよ…。
 だから今回のもちょっと心配だったんだけど、寝台部分が禁煙なせいか、禁煙車を取れなかった人たちがたくさん来てたのか、タバコのにおいはほとんどなかった。
 寝台は思ったよりずっとよかった。これどう見ても電車の椅子だろ、といわれればそうなんだけど、意外と広いし、カーテンを閉めれば立派な個室。備品のシーツ、毛布、枕、ハンガー、そして浴衣…電車の中で浴衣ってのもすごい。
 引っ張り出して使う机が、通路側の蛍光灯の近くに一つ。天井(というか上の人の寝床)の近くに同じく引っ張り出して使う棚が一つ――この棚は注意しないと頭をぶつけてかなり痛い思いをすることになる。

 列車は11両の客車を、1両の機関車で引っ張る編成。なので普通の電車のようなモーターの音とかは全然しない。レールの継ぎ目を車輪が通るときのかたかた、という音と振動があるだけ。ヨーロッパの鉄道に乗った時のような感じ。ただし制動が基本的に前だけなので、ちょっと強めのブレーキや加速がかかると、がしゃん、と衝撃が来る。最初はびっくりするけど、そのうち慣れてしまう。
 上り(上野→札幌)では、一番後ろが1号車。2、3、4、5号車が禁煙のB寝台――って何か喫煙車が思いっきり「隔離」されてる感じ。
 6号車はロビーカー。サロンみたいな感じで、窓に向かって椅子やソファが並んでいる。片隅にある謎の箱部屋はシャワールーム。7号車の食堂車側の入り口に、ジュースの自販機。
 乗客はここでのんびりするわけだが、タバコのにおいはこちらのほうがキツイ。かつ酔っ払いがくだまいて騒いでたりする(…)。なんか渋谷の道に座り込んでそうなファッションの兄ちゃんが、やっぱりお得意のあの格好で、仲間の座るソファーの側の床に座り込んでた。いや別にかまわないんだけど、普通に椅子に座ろうよ。
 7号車の食堂車は、午後9時半までは予約の必要な時間。それ以降は予約の無い人にも解放される。なぜかワゴンサービスでの食料の搬入が極端に少なくて、物を食べるなら持ち込むか食堂車に頼るしかない。最初から中で食うことを考えていた僕は、9時半を待つことにした。
 室内はこぎれいな、というかかなり豪華なレストラン。窓際に机と椅子が配置され、それぞれきれいなランプと花が飾ってある。細長い形とかまぼこ型の天井で、ここが列車の中なんだな、とわかる。料理は結構なお値段がするわけだけど、列車の中で、外の景色を眺めながら、これだけ豪華な雰囲気の中で食事が出来るなら悪くない。
 この列車の中の人たちの食事をまかなうのにたった28席しなかいのはどうか、と思ったが、値段を考えれば利用率はそんなもんか。
 時折現れる大きな駅と、その周りの町の明かりを眺めながら、のんびりと紅茶を飲む…贅沢な時間だった。

 食事が終わると、あとは特にすることもない。というか寝たい。
 ということで11時頃には、電車の音を聞きながらぐっすりだった。
 食堂車からの帰りに、車掌さんから青函トンネルを通過する時間を聞き、その時間に携帯のアラームを合わせておいた。
 青函トンネル…どんな雰囲気なんだろう??

続く→

(03/9/23)
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