「間違って換えてきちゃったんだけど、このメダル。」
会社帰りのゲームセンター。たっぷり遊んだしそろそろ帰ろうか、という頃になって、同期の一人がこんなことを言った。これが全ての発端、というか諸悪の根源、というべきか・・・。
今日のメンバーの中にメダルゲームに興味のある人はいないし、知り合いにも見当たらない。そんなものあってもしょうがないから、最後に競馬ゲームでもやって、派手にすって帰ろうということになった。競馬ゲームは時間のせいもあってか、ガラガラだった。一台の端末に7人が集まり、手持ちのメダルを全てつぎ込む。
賭けるのはもちろん大穴、単勝で倍率60倍を超えるとんでもない馬である。名前も「スーパーナカヤマ」・・・いかにも走らなさそうな名前がまたいい。18枚を「スーパーナカヤマ」の単勝に一点買いである。
常識はずれもいいところだが、これで当たったら面白いし、外して当然という腹づもりでもある。レースが始まると、10番のゼッケンをつけた「スーパーナカヤマ」は第2集団の先頭あたりにつけていた。絶好の位置といえばそうかもしれないが、その位置からじりじりと後ろに下がっていっている。レースが終盤に差し掛かってもその調子で、画面には10番の馬影のカケラも見えない。
これはこのままずるずる下がって終わりとか、善戦しつつ3位ぐらいになっておしまいと誰もがそう思っていた。レースはついに第4コーナーを回り、最後の直線に入った。
カメラは第1集団にはりついているが、前からの映像なのでゼッケンが見えない。
確か後ろのほうにわれらが「スーパーナカヤマ」がいるはずだ・・・
と捜していたら、集団の合間を縫って猛然とスパートしてくる馬がいる。ゼッケンは10番・・・・・・何ですと!?
かくして「スーパーナカヤマ」はその見事な”末脚”でもって、結局大差で劇的な逆転優勝を果たしたのである。
60倍の賭けに勝利したのはいいものの・・・・・・扱いに困るメダルが、これで大量増殖したことになる。
画面に表示された手持ちメダル数は、なんと1101枚(爆)
20枚でも扱いに困っていたのに。どーすりゃいいんだ、これ!?
勝利の興奮とメダル増殖に大騒ぎする7人の会社員(苦笑)
とりあえず払い戻しボタンで外に出してみることにした。じゃらじゃらじゃら・・・・・
そばに置いてあった巨大なカップラーメンのような容器にメダルを入れていく。
ついに一つがいっぱいになり、交換する。とんでもない重さで持つだけでもたいへん。
でも画面の表示はまだ700枚以上。――これがあと2つ以上あるってこと??
そんなぞっとしない想像をしてしまったとき、払い出しボタンが効かなくなった。画面には
「Attendant Payout・・・」
との表示。店員に払い出してもらえ、ということらしい。
つまり我々は端末の中に入っていたメダルを全て取り出してしまったのだ(爆)。
早速店員を呼び、カウンターでメダルの払い出しを頼んだ。カウンターの奥では、店員がパチンコ屋さんにあるようなメダル計測器でメダルを数えていた。店員は途中で機械を止め、計測器の下に置いてあったカップを取り出す。さらに店員はこのカップの上に、メダルのたっぷり詰まった同じようなカップを重ね、
「どうぞ」
とカウンターの上に載せた。いったい何枚入ってるんだ、これ・・・・・・いや1101枚ということはわかってるんだが。
というより今こんなもの渡されちゃっても困るんですけど・・・・・・。
ホントにこれ、どうするんだ!?結局、メダルを買ってきた奴の名前で登録し、とっておくことにした。せっかく当てたメダル、もったいないし、また今度行った時に使えばいい。
「中学生じゃないんだから・・・」
仲間の一人が情けない声をあげた。〜その後〜
我々が賭けた「スーパーナカヤマ」、実は重賞を勝ったことのある強い馬だったとか。
(ファンの方、「走らなさそう」とかいってスミマセン!)
無知な我々は、わざわざコインを増やしにかかっていたことに・・・。数日後、例のコインはあの時出かけた連中の手によって湯水のごとく使われた。
メダルゲームを飽きるほど堪能してきたらしいが、まだ300枚しか使えてないらしい。
残り800枚。
もうすぐ別の事業所へ行くことになる我々にとって、あのメダルをみんなで使うチャンスは、実は8月半ばの1週間しか残されていなかったりする・・・・・・。
(01/7/13)