――――― 終章 ―――――
 
「お疲れさまーーーーっ!!」
年末の一大イベント、中・高等部合同のクリスマスパーティーが無事成功をおさめ、報道部の面々はみな一様に安堵の表情を浮かべている。今は、大地の家での打ち上げの真っ最中だ。
「今年も無事に終わってよかったよ」
「ホント。去年よりスムーズにいったよね」
「スムーズにいきすぎて、新聞のやつらは大変だったけどな」
「まあまあ、それもいいことではないですか」
「ま、そうだけどさ」
陽はコップに入ったコーラを一気に飲み干すと、意気揚揚となるメンバーの中で、ひとりだけ少し浮かない顔をしているのを見つけた。
「リンちゃん、お疲れ」
「あ、瀬戸さん。お疲れさまです」
「どうしたの?元気ないみたいだけど」
「あ、いえ、大丈夫です。少し疲れてるだけなんで…」
「そう?」
やっぱり少しおかしい。単に疲れてるだけではないようなかんじだ。
「リンちゃん、例の事件のこと、どうなった?」
「あ…えっと…」
「ん?」
「あ、何もなかったです。今になっても、全然何もわからないし…」
「そっか。これからどうするんだ?まだ続ける?」
「もうほとんどあきらめてます。これだけやってダメなら、無理だろうって」
「そっか。わかった」
陽はそれ以上何も言わなかった。鈴音に何かあったのは確かだろうが、おそらく訊いても何も答えないだろう。
「あ!みなさん!見てください!雪ですよ!」
牡丹がカーテンを開け放つ。空から粉のような雪がぱらぱらと降っていた。
「わー!キレイ!」
「これぞ、本当のホワイトクリスマスってやつか?」
「なに似合わないセリフ言ってんのよ、大地」
「あんだと?失礼なやつめ」
奈央と大地が言い争っている。鈴音もそれを楽しそうにながめていた。
 庭には大きなクリスマスツリーがある。赤や黄色の電球が、それを綺麗に輝かせていた。
(ホワイトクリスマスか…)
尚人もこの雪を見ているだろうか。あの二人はどんなクリスマスを過ごすのだろう。
 クリスマスツリーの光が鈴音に微笑みかけたように思えた。鈴音もそれにこたえてつぶやく。

 "メリー・クリスマス"



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