ドリームキャストに最後のサクラ咲く―――
1996年の第1作発売から約7年。セガがドリームキャスト最後の大作として送る「サクラ大戦4〜恋せよ乙女〜」は、過去に発売された3作品の流れを主体とし、「第一部完結編」として開発された。「一話まるごと『最終回』みたいな感じで作った」という、総合プロデュースの広井王子氏の言葉にもあるように、今回のサクラ大戦には、過去の作品のように「第〜話」といった設定が存在しない。本当に作品自体が「最終話」という形で展開する。
過去の作品をプレイした人ならわかるだろうが、今回初めてプレイヤーの分身である大神一郎が、本当の意味で「主役」になった感じがある。帝都花組の8人に加え、巴里花組の5人を加えた総勢13人の乙女たちの中で、一人の男としての決断を迫られる部分がある。(広井氏には申し訳ないが)ある種「ギャルゲー」的な要素を内包するサクラシリーズの「主役」を演じることができていると思う。そういう意味では、過去の作品とは一味違う作品であるといっていいだろう。
大神一郎を前面に押し出す過程として、今回の主題歌「檄!帝〜最終章〜」を、大神一郎役の陶山章央氏が歌い、帝都・巴里の両花組のメンバーがコーラスとして大神の声を引き立てるという試みを実施。この「檄!帝〜最終章〜」は、ゲームではフルサイズを聞くことはできないが、「サクラ大戦」及び「サクラ大戦2」の主題歌である「檄!帝国華撃団」と、「サクラ大戦3」の主題歌である「御旗のもとに」を1コーラスづつ引用した異色作である。シリーズ当初から作曲を担当する田中公平氏は「あとあと何かあるかもしれないと思って、『ゲキテイ(檄!帝国華撃団)』と『御旗のもとに』はテンポを同じにしたり、はじめと終わりのファンファーレを似せたりした」という。本編を一度クリアしたあとに遊ぶことができる「帝劇の長い一日」で、インストバージョンを聞くことができるので、「ゲキテイ」と「御旗のもとに」がどのようにして繋がっているか、ぜひ聞いていただきたい。
時間的に余裕のない中で「かわりに主題歌には凝りに凝った(田中氏)」というエンディングテーマが、帝都・巴里両花組に大神一郎を加えた14人で壮大に歌い上げる「君よ花よ」である。本来メロディーに乗せるべき部分をあえて台詞調にしたり、途中アカペラによる合唱を取り入れたりと、新たな要素をふんだんに盛り込んだ8分44秒の大作である。歌詞を書き出してみると、「いのち」という言葉が非常に多く使われているのがわかる。何度も聞いていると、図らずとも「いのち」の重みについて考えさせられる曲である。「命短し 恋せよ乙女」という作品のテーマを忠実に形にしたものになっていると思う。帝都・巴里の13人によるアカペラの大合唱もとてもよい響きで、低音域を持ち味とするキャラクター、高音域を得意とするキャラクターそれぞれが絶妙に絡み合って、非常にきれいなハーモニーを聞かせている。4月10日にサウンドトラックが発売されるので、ぜひ聞いてほしい一曲だ。
さて、サクラ大戦といえば、劇中劇も大きな魅力のひとつだ。今回の劇は「あぁ、無情」。この「ああ、無情」は、19世紀の小説家ヴィクトル・ユーゴーの長編小説「レ・ミゼラブル」を黒岩波香が日本語に翻訳したもので、原作とくらべてかなり内容が縮小されたものだそうである。具体的な内容は割愛するが、19世紀という激動の時代を象徴するような、生と愛の物語である。「サクラ大戦4」で演じられる「ああ、無情」は、主役のジャン・ヴァルジャンに男役として不動の人気を誇るマリアを、相手役のジャベールに紅蘭という初の組み合わせ。また、マリユスとコゼットのカップルにレニとアイリスを当てるという、こちらは半ば「お似合い」の組み合わせである。実際の劇の場面は、本編のエンディング前にクライマックスが紹介されるだけだが、本編の最初のほうで簡単なあらすじが紹介されるので、「ああ、無情」を読んだことがない人でも理解はできる。が、もっと深く楽しむなら、本を読んでおいたほうがいいのは言うまでもない。
今回、悪役である大久保長安を、総合プロデューサーである広井王子氏が自ら熱演。声に相当のエフェクトがかかっているので一度聞いただけではわかりにくいが、ラスボスを倒すと、エフェクトなしで話す台詞があるので、そこを聞けばわかると思う。能楽師という性格にぴったりの声で、聞けば聞くほど味が出るのがわかるだろう。また、神埼すみれを演じる富沢美智恵さんが声優業を引退するため、サクラ大戦での出演もこれが最後となった。本編では、本当に最後なのか?というような別れ方をするので、往年のサクラファンにとっては「5以降も出てくるんじゃないだろうか」と思えてしまうだろう。神埼すみれの最後の舞を存分に堪能していただきたい。
メカの面では、「光武二式」と呼ばれる新型機が登場。「サクラ大戦2」でも活躍した「光武・改」の外観を継承しつつ、キャラクターの個性をより追求したデザインに変更されている。そして最終決戦兵器として用意されているのが、新型霊子甲冑「双武」。この「双武」は2人乗りの機体で、この機体に乗るためのパートナーがエンディングの対象となる。「双武」の攻撃力は「光武二式」とはくらべものにならない。ほとんどの敵を3発以内で倒すことができる。ラスボスである「神体」を倒すときは、この「双武」を近接戦闘型とし、他の機体はなるべく遠距離攻撃型にするのがよい。また、コクリコ機や織姫機など、全方位攻撃型の機体を画面上部に配置し、たまに出現する目玉のような敵機を撃墜する役に当てると戦闘がかなり楽になる。神体はまったく移動をしないので、各機体の配置さえしっかりすれば、エリカ機やアイリス機などの回復役を連れて行く必要性はまったくなくなる。攻略という面では、ラスボスよりも、中ボスである「シカミ」や「ハクシキ」のほうが難度は高いだろう。
「ドリームキャストでの最後の作品なんで、ファンの皆さんに対する『ありがとう』という気持ちを込めて作った」とオーバーワークスの大場規勝氏は言う。「本当にたくさんのファンの皆さんに支えられてここまで続けられたと思っている」と広井氏は語る。7年間積み重ねてきたものの集大成として。ファンに対する感謝の気持ちとして。ひとつの区切りとして。「サクラ大戦4」はさまざまな意味を含んでいる。ドリームキャストという舞台を卒業することになったサクラ大戦は、今後舞台をプレイステーション2に移して更なる発展を遂げていくことだろう。次回作以降に展開される「サクラ大戦 第二部」に対する大いなる期待をこめて、開発スタッフに「ありがとう」の言葉を送りたい。 |